日々雑録
ブツネタ505「山門引戸の製作」
山門の扉のことでご相談を受けました。


赤で囲った部分が傷んでいるから見て欲しいというのが最初のやりとりでした。
こちらの山門、以前に欄間を取替えさせて頂きました。
思い入れのある山門ではあります。
今回はその通用口である板戸(引戸)のお仕事になります。
板戸の傷みに関しては、
まず、使っている材が杉だったこと。
直接風雨にさらされる場所なので、やはり杉ですと傷みやすい。
馴染みのある木で、色合いや杢目も好まれやすいかと思いますが、
屋外ではお勧めは出来ません。

次に、構造の問題。
割れが生じているのは、構造上の問題です。
補強として、帯桟を入れてありますが、鏡板と帯桟は固定されていて、
板自体が伸び縮みが出来ない状態になっています。
帯桟に固定され動けなくなった鏡板は、伸縮したくても出来ず、
割れてしまうしかなかったわけです。

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板戸には戸車が2個付いていて、レールは基礎のに取り付けられています。

雨の影響を最も受ける下框は、随分腐朽していました。
ということで、
既存の板戸は、再利用不可と判断し、新たに製作することになりました。
そこで、どの材を使用するか検討し、
提案したのが、「栗」材。
「栗」は耐湿性に優れ水に強く、タンニンが含まれているので防腐性があります。
堅くて重い木になるので加工は難しくなりますが、
屋外ということを考慮すれば最適な材と言えます。

この画像は、材木屋さんから送って頂いたもの。
材の確保は、これこそまさに縁です。
仏具では栗材を使用することはまずありませんが、
良材を分けてもらえることになりました。
先ほどの材を、製材してもらいました。
さて、良い栗材を入手できたので、いよいよ製作にかかります。
こちらは框。枠を組んだところ。
未だ接着はしていません。

鏡板を嵌め込むミゾを四方に作り、しゃくり面を取っています。

鏡板を取り付けるとこうなります。

ここから、帯桟や連子窓、レールのミゾなどの加工をしていきます。
まず、帯桟は、既存分と同様に3本入れます。
蟻桟(吸い付き桟)にて固定するので、そのミゾを作り、
縦框にホゾで固定。


ただし、 鏡板が伸縮出来るようにしているので、
既存の板戸のような割れは生じません。
次に、連子窓。
今回の特徴でもある連子窓は、少し意匠を変えました。


既存の連子窓は、
こちらは裏側ですが、連子棒が嵌め込まれていましたが、
むきだしの状態で、数本は釘で留められてもいました。(後補でしょうか)
今回は、そこに紐面を付けて

カドを落として丸く成形して

このような感じに。 随分格好良くなりました。
連子棒が脱落することもありません。
次に、レールのミゾと戸車の設置ですが、

実際に現場で合わせてみないとわかりませんので、
現場での作業となります。
あと、引手なんですが、
既存分は、長方形にしゃくってあっただけでしたが、それでは面白くないので、
栗の板を丸く抜き、裏板に黒柿の孔雀杢を嵌め込みました。


こちらは表側の引手で、
裏側は、神代欅にしました。

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そこに撥水表面処理をしまして、概ね完成です。

さて、現場作業。
下調べはしていますが、何せ屋外なので思いがけないことが発生するやもしれません。。
まずは、電気錠の穴あけ。


戸車の設置。


戸車の取付け位置によって、開閉具合も大きく変わるので
取付け取外しを繰り返しましてようやく完了。


水を吸わせないために底には、生漆を塗布して、現場作業も終了です。



12月で天気も良く、比較的暖かい日でしたので、
無事納入出来、晴れやかな日となりました。
仏縁に感謝。