日々雑録

仏具修理の話22『雲袖位牌の部分修理』

2020/01/16(木) 仏具修理の話


今回の仏具は、位牌。 

札の両サイドと上部に雲の彫刻が付く雲袖位牌です。


過去にも位牌の修理をご紹介しました。

「文字彫刻を生かす位牌修理」


この時は、江戸に作られた位牌で、

経年による漆や金箔の剥落等が気になり、

位牌自体をきれいに塗り替えるものの、札に彫られた文字は生かしたい。

というご意向によるお仕事でした。


さて今回はというと、今回も特殊です。




こちらの天牌。明治天皇と昭憲皇太后のお位牌です。


そもそもは、
明治天皇の位牌に頂部の雲彫りが亡失していることがきっかけでした。


塗り替えるといったご意向はなく、亡失した彫刻を補作する。







さらに札板には、墨書きされた和紙が貼られ、

書き文字ではなく、彫刻をしましょうという流れでございました。



とりあえずは、本体を傷めないように、この和紙を剥がすところから。。





今の位牌は、安価に作られたものばかりなので出来ないですが、

昔の位牌や伝統的な工法で作られている位牌は、

膠による下地が施されているので、

水分を含ませると下地を除去することが可能です。




雲彫りの部分は現状を維持し、

札の部分(地透きしたミゾ部分まで)を塗り替える予定でした。


そして紙を剥がしたところ、




個人の戒名が彫ってありました。。。

紙が貼ってあったのがここで合点がいきました。

漆と下地の層を除去し、木地に戻しましたが。



彫り文字が札板に残っています。

このまま下地をして漆を塗っても、

新たに文字彫刻した場合、支障が出る恐れがありますので、




文字のミゾがなくなるまで、札を削って平らにしました。


そしてようやく、塗師の手に渡るわけです。


京都は仏具や仏像において、その専門の職人が揃っています。

その中でも、位牌の文字彫刻を専門とする職人がおります。

位牌ばかりただひたすらに文字を彫り続ける職人さんです。


ただ、近年は葬儀屋さんなどが仏具を扱われるようになり、

京都でも機械彫りの文字の位牌が目立つようになりました。



話が逸れてしまいました。

何を言いたいかといいますと、
位牌は文字を彫刻することを前提としているので、
基本は膠と胡粉による下地で製作します。

ですが、今では機械で文字を彫ることが当たり前になって、
手で彫ることを考えての昔ながらのルールが崩れ去りました。


もちろん、私どもが製作する位牌は、
数も少ないので、大量生産を考える必要はなく、

今回の修理においても、昔ながらの材料・工法で製作しています。


天皇さんの位牌の亡失した雲の彫りは、皇太后さんの形に合わせて、




天皇位牌は、札と雲彫りと、塗がめくれてしまっていた敷茄子を、

皇太后位牌は、札を漆で塗り上げました。



そして、

もとに貼ってあった墨書きの紙の出番です。

この文字を残したいというのは、今回の修理でも同じ。

この墨書きと同じ字体で彫刻するのが、今回のお仕事のポイントでしょうか。




札に紙を貼って文字を彫ります。


気に入っておられる文字だけあって、彫刻すると存在感が増しました。


そして、ようやく金箔押し。




修理の対象とならなかった部分もあるので、

汚しすぎない程度に古色彩色を施して、修理完了です。







今回はすべてを塗り替えるのではなく、

最低限度、塗り替えが必要なパーツに限り修理させて頂きました。






毎回、このようなお仕事をご縁頂くときに、文字の重みに直面します。

位牌の彫刻は、どんどん機械化が進んでいます。

確かにきれいに彫れるのですが、妙味が感じられません。


位牌は本体の出来も大切ですが、
札に彫る文字にも重きを置かねばなりません。

文字で心を奪われるような位牌。 作りたいですね。




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