日々雑録
ブツネタ475「お西木仏点検の阿弥陀像②」
前回からの続きです。
御本山のお木仏点検が対象の阿弥陀如来像ということが前提で
今回のお仕事はご拝命頂きました。
前回にも少し触れましたが、
本願寺派(お西)の場合は、御本山と御台座、御光のそれぞれが点検の対象となります。
点検の項目は多くの項目があり、
それらを熟知した者でないとご本山のご門主印を押印いただくことは難しいと思います。
今回のご本尊は、桧材で寄木造、玉眼、漆箔仕上げ。
台座と御光は、松材。 台座の形状は古代型で製作させて頂きました。
さて、台座ですが、点検の対象となる形状は大きく分けて2通りあります。
1つは段数が多い「御本山型」
そして、段数の少ない「古代型」
今回の場合ですと、ご本尊は、立像1尺2寸のお身丈でしたが、
仮に、台座をご本山型にしますと、お身丈は1尺に満たない大きさになってしまいます。
寺院用なのか、在家用なのか、 また、お祀りする場所の有効寸法等を考慮した上で、
ご本尊の寸法と、台座の形状をご提案させて頂きました。
こちらは木地、彫り上がりの段階。
この後は、塗師の工程になります。
塗師(ぬし)とは漆を塗る職人のことですが、
漆を塗る時間よりも、それまでの工程に大半の時間を費やします。
接合部を薬研彫りして、刻苧を充填、和紙を貼る、
膠と胡粉による下地を塗り、研磨、
さらには、砥の粉と膠による地をヘラ付けして、研磨、
そのような工程を繰り返して、表面をなだらかに整え、
そしてようやく、漆を塗ります。
とはいっても、その後は金箔で仕上げて終わりではなく、
木地の段階で、肩から衣にかけて(上げ手/右手)を割っておいて、
物理的に金箔を入れることができない袖内部を先に金箔を押します。
金箔を押したら、肩を接合し、接合面の筋を消すために
右肩の部分のみを下地を補正し、漆を塗り、 再度、金箔押の職人に移します。
そして、再び金箔を押し、
全体に金箔が押し終わり、乾燥後、
肌の部分のみ、今度は金粉を蒔いて仕上げます。
画像は漆を摺っているところです。
金箔をすり潰して粉状にしたのが金粉で、艶が消えてるので消粉と呼ばれます。
金箔も消粉も漆が接着剤になります。
金箔が仕上がれば、
そのあとは、彩色師に移ります。
殆どが仕上がった状態で、最後に
螺髪、生え際、眉毛、髭、唇を彩色。
とってもとってもリスクを伴う大変な工程です。
(玉眼なので瞳は、彫刻が仕上がる前に描いています)
そうそう、ご本山の点検では、
螺髪の色や、髭においても指定があります。
台座光背も、ご本尊と同様に漆塗りを施して、
蓮台(葺蓮華)は、白地で蕊のみに漆を塗り、
金箔を押してから、
岩彩色の上、截金を施しました。
そして、こちらが完成です。
そうそう、今回は、ご本山のお木仏点検込みのお仕事。
もう少し詳細を申し上げると、点検は2回の審査があります。
1次審査は写真審査。
写真もどのような写真が必要か決まっていて、提出するサイズも指定されています。
その審査が通ると、次は半月後に2次審査になり、
今度は現物をご本山の龍虎殿にて審査頂きます。
審査が通れば、
ご本尊と御光のホゾに ご門主印を押印して頂けます。
そして、證書が授与頂けます。
このような点検制度があるのは、
本願寺派と大谷派の御本山のみでしょうか。
他の派や、他の宗派では聞いたことがありません。
海外製や量産品等を否定するわけではありませんが、
このような制度がきっちり組織化されていることは、後世に伝えるという面で、
お寺や門徒さんにおいても、職人においても非常に良いことだと思います。
ともかく、期待をしてくださったお寺様、ご施主様に
喜んでいただけたこと、何よりでした。仏縁に感謝。