日々雑録
ブツネタ483「過去最大のお木仏点検」
ここ数年、本願寺派の木仏点検のお仕事のご縁が続いております。
今回はその点検のお仕事のお話です。
弊社では、木仏点検のお仕事の多くが身丈6寸や5寸。
比較的小さなお木仏の点検が多いのですが、
今回のお木仏は、身丈2尺。
弊社の点検史上最大です。(ちなみに最小は4寸)
それでは、今回の身丈2尺の阿弥陀如来像の製作工程をご紹介します。
こちらは木寄せの段階です。
材質は、尾州桧材。木曽桧とも呼ばれます。
当たり前のように、仏像製作では尾州桧を使用していますが、
尾州桧として扱われるものは、
木曽で育つ樹齢200年以上の桧で、
木目が細かく、歪みや縮みが少ない木になります。
さらに仏像彫刻として使用する場合は、その中から厳選した材になります。
国産の桧という括りでは、尾州桧も国産の桧ではありますが、
いわゆる、多く世に出回っている「ヒノキ」と「尾州桧」は、別物です。
さて、こちらは仏師工房にて。
胴体は内部を刳り抜き、空洞にして、両肩と頭部は、別で彫り上げます。
こちらは、頭部。
お顔のこめかみ辺りで切り離し、内部を刳って、
人工水晶で製作した玉眼を取り付ける前の段階。
弊社では、天然の水晶を削り出すのではなく。
人工水晶を吹きガラスの要領で、玉眼を作っています。
玉眼を取り付けると、
レンズの内側から瞳を描き、白目部分となる綿を固定すると、
このような仕上がりに。
レンズ越しの瞳が、より写実的に見えます。
さらに今回も、像内納入品を推奨させて頂き、
円柱の筒に品を入れて、内刳りされた像内に納入させて頂きました。
そしてこちらが、本躰の彫り上がりです。
頭部は胴体に固定し、
両肩と両手首はこの段階では接合せず、
次の工程である下地や漆塗りでは、ばらした状態で作業していきます。
一方、こちらは台座と光背の木地。
本躰と同様に、こちらも尾州桧を使用しました。
本願寺派の点検は、台座も光背も点検の対象となります。
台座は、段数の多い「御本山型」と、段数の少ない「古代型」があり、
今回は前者の「御本山型」で製作をさせて頂きました。
台座光背に関しては、今回は割愛させて頂き、
こちらが彫り上がりになります。
、
本山の本願寺の阿弥陀堂に祀られている台座と同じということで「御本山型」と呼ばれます。
余談ですが、
御本山阿弥陀堂のご本尊の光背は、いわゆる本願寺派の光背と認識されている形状と異なり、
こちらのような光背 が設置されています。
さて、塗師の工程ですが、
まずは、木地堅めとして生漆を摺り込みます。
生地に漆を浸透させて、木地の補強を行います。
次に木寄せ箇所(接合部)に
刻苧(こくそ)彫りといって、薬研彫り(Vの字)にミゾを彫り、
そのミゾに刻苧漆(漆+小麦粉+木粉)を充填。
どこで接合されているか、この画僧を見るとよくわかります。
さらに和紙を張り、
漆下地(漆と砥粉による下地、いわゆる堅地)を付けては研ぐ工程を繰り返します。
こちらは研いだ後。
そして、中塗りの漆塗りを施した後に、
その後、研磨をして、左肩を接合し、
上塗りの漆塗り。
この段階で、一旦箔押師の手に渡り、
右肩を接合する前に、右側の袖内部を先に金箔を押します。
ようやく、右肩も接合し、接合部の補整。
補整箇所に漆を塗って、接合面がわからなくなりました。
この段階で、塗師の工程が完了です。
この後は、残った部分の金箔押し。
そして、肌部は金箔押しから金粉蒔き(ヌグイ仕上げ)になります。
さて、台座と光背ですが、
こちらは膠と胡粉による下地、漆塗り、金箔押し、と仕上げていき、
蓮台(葺蓮華)は岩彩色及び截金にて仕上げました。
こちらが完成写真になります。
お身丈1尺前後でしたら、螺髪の彫刻が埋まってしまうので使用しませんが、
今回は、2尺ということで、岩絵具での群青彩色としました。
金具は、金具3段打ち。
これだけの数の金具を取り付けますと、重厚感が増します。
そして、蓮華と下段の連子は、あえて少し違う緑にしました。
あ、ここは同じ絵具を使ってるな・・というのがあまり好きではない。それだけの理由です。
蓮弁は、立像2尺ということで、1枚がそこそこ大きくなるので、
截金の筋はいつもより2本多く。
そして、こちらは、御本山での木仏点検の押印時。
光背とお木仏のホゾに押印頂きました。
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