日々雑録

ブツネタ486「町のお地蔵さん建立のお話③」

2023/07/16(日) ブツネタ

 

前回からの続きです。

 

 

下地を除去し解体したお地蔵さんは、

再度接合し、木地を修理。

台座も含めて木地修理したのがこちらです。

 

木地の戻すと非常によくわかります。

これほどのバランスの良いお像は、なかなかお目に掛かれません。

 

像内が内刳りされていたことは前回にご紹介をしましたが、

腕の良い仏師さんが彫られたことがよくわかります。

 

眼のほうもきれいに玉眼が嵌入されていて、

レンズを嵌入し直し、

レンズに瞳を描きなおし、

白眼となる綿を詰めて固定。

 

さらに、内部が内刳りされていることもあり、

施主様に、像内への納入品をお勧めさせて頂き、

修理年月日や願文を記入頂いて、油紙と金襴で包み、

 

 

 

 

像内に納入。

 

 

さあ、この納入品を開封されるのは次回何年後になるのか。。

 

先に申しましたが、台座と本躰は修理で、光背は新たに製作します。

お地蔵さんの光背で、最も多いのが輪光(りんこう)。

そこに宝珠が3つ付くもの一般的です。 今回のお地蔵さんもそうでした。

 

ですが、今回はより華やかに演出するのに、舟型光背にして、

室生寺の地蔵菩薩像にも見られるような、

頭光と身光が重なり合うくぼみを持たせた輪郭の舟型をご提案しました。

 

 

そこに、唐草の透かし彫りを彫刻します。

 

 

さて、どのように彫りあがるか。。

 

 

 

そして前回、栃の木地をお見せしましたが、

八華型(はっかがた)と名付けている弊社オリジナルのお厨子を製作します。

 

こちらは扉部分。

栃でよく見られる縮杢(ちぢみもく)。

波状に縮んでしわが寄ったように見える杢を縮杢と呼びますが、

その縮杢の程度が極上、いや最上☆

扉全体に細かな縮みの杢が、いっぱいに入っています。

 

八華型厨子は、曲面の多い厨子で、

もちろん扉も湾曲しています。

 

曲面になると、作業内容はかなり変わってきます。

 

 

 

https://youtube.com/shorts/7GUIxeEpG_8

 

こちらは内側の曲面。

鉋を使い分けて最終は、極小の鉋で表面を削り、きれいなアールを作り出します。

その後、外側も同様に削り出していきます。

曲面があるのとないのとでは、手間が全く違うのがわかって頂けるかと思います。

 

あと、塗下ではなく、木地仕上げ。

下地を付けるわけではないので、よりきれいな仕事を求められます。

 

しかも、松などの針葉樹ではなく、栃は仕事の難しい広葉樹。

難度はどんどん上がるんです。

 

 

 

こちらは扉

接合部には、ただ接合面に接着剤を付けて留める芋付けではなく、

双方に溝を作り、留めを入れます。(赤矢印の部分)

 

 

木は湿気や乾燥により、伸縮しますので、

面をただ接着するのではなく、このように留めを入れることは、

接合の補強になるわけです。

 

 

こちらは、厨子の下部ですが、

接合部にも同様に留めを入れています。

そして、

見ての通り、曲面だらけです。

 

格狭間1枚だけを見ても、

1枚の板から、両面を丸めて1枚の湾曲した格狭間板を作ります。

削り出すので、材料も厚みが必要になります。

 

一部固めた部分もありますが、これだけのパーツに分かれます。

 

 

・・ということで、厨子の完成は次回にご紹介します。

 

 

 

では、祠のほうですが、

 

まだ、登場していない 卍部分 について触れておきましょう。

 

この部分ですね。

 

 

お地蔵さんの祠には、

地蔵卍 が付きもので、京都市内の祠の調査では、

かなりの確率で、卍がどこかしらに表現されていました。

 

今回の祠には、

提灯や幕にも、卍が入りますが、

一つの象徴でもある地蔵卍を、祠に取り付けたくて、

祠に一体となり、それでいて安っぽくなくて、インパクトも持たせたい。。

 

 

 

ということで、銅地で、打出し地彫り。

図柄自体は、簡単なものですが、

裏から地金を叩いて、表から模様を浮き出す技法を採用。

かなり、卍が浮き上がってます。  存在感は絶大。

ちなみに、側面の輪の部分は、別材を接合したのではなく、

1枚の銅地から作り出しています。

 

このあとは、水銀箔鍍金を施し、

卍ではない部分には魚々子を蒔きます。

こちらも完成は次回にご紹介したいと思います。

 

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