日々雑録

仏像修理の話87『長谷寺式のちっちゃな十一面観音像』

2020/08/11(火) 仏像修理の話

 

前回に引き続き、小さな仏像修理の話になります。

 

前回の荼枳尼天さんも非常に秀逸でしたが、今回もすごいです。

十一面観音さん。

バランスの良い作りですが、大きさはというと。。

像高は、約55㎜ 

身丈は45㎜。なんと1寸5分です。

小さくてこのクオリティはすごい。

右手に錫杖、左手に水瓶を持つ、いわゆる?長谷寺式”の十一面さん。

しかも、十一面さんが納まる厨子の扉には、

向かって右に、難陀龍王、

向かって左に、雨宝童子 の絵が描かれてあり、

それがまた、すごく秀逸。

長谷寺の十一面観音三尊を忠実に表現されています。

あと、光背も梵字入りで、唐草と火焔の表現までされています。

 

なかなか拝見できないハイレベル&超こだわりのお仕事です。

近年ではこのような持念仏や守り本尊のようなのを作る機会は少なく、

当時は、このような小さな木仏を得意とする仏師や職人も居たと推測します。

 

 

さて、お仕事の内容としましては、

錫杖を持つ右手の肘から先が亡失していて、そこを補作。

あと、厨子の屋根や幕板が外れ、光背も歪んでしまっていて、

全てを固定させるというお仕事でした。

 

水瓶には蓮が挿してあったかと思われますが、

今回はその新補は不要とのことで、現状のままとなりました。

 

そして、修理後の画像です。

全てにおいて、極小サイズというのは仕事がし辛い中で、

どこが傷んでいたのかわからないようにするのが醍醐味でもあります。

 

これだけ小さな木仏の手のひらを彫るのに、

 

強度やきれいな削りをするために白檀を使用しました。

 

指の曲げ具合や、親指の関節のしわなどを見てもらえれば
その程度をわかって頂けるかと思います。

 

 

ただ、今回の仕事に関しては、

ただただ凄いなと驚かされることばかりでした。

木仏のクオリティ、
光背のクオリティ、
扉絵のクオリティ、

厨子本体のクオリティ、
厨子金具のクオリティ、

 

どれもこれも圧巻でした。

こういったお仕事のご縁を頂けることが、
我々にとって財産になるわけで、とっても有難いことです。

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