仏壇が完成に至るまで
細かな工程を踏んで、仏壇はつくられています。
仏壇が完成に至るまで
京仏壇・京仏具の製作工程には、細かな分業体制が確立されています。各部門、それぞれ技を極めた匠がいて、それを集大成して仏壇はできあがります。それだけ多くの職人たちが、京都の町で暮らしているということです。千年の都・京都の奥の深さが実感されます。仏壇ができるまでを簡単にご紹介しましょう。
工程1木地(きじ)使用材として、桧、松、欅、杉などの材木を厳選し、各宗派の様式に基づき、下地や漆の塗り膨れを計算に入れて製作します。 |
工程2木彫刻(もくちょうこく)図柄を選定し、木材に何十種の鏨(のみ)、小刀を使い分けて彫り上げます。文様には、雲、天人、草花、鳥、獅子など御本山の様式に準じながら、須弥壇、狭間(ランマ等)などの限られた範囲に、いかにして生命力、躍動感などがバランスよく表現をするかが重要な仕事となります。 |
工程3漆塗り(うるしぬり)木地及び彫刻の上から下地、中塗を施してから、天然精製漆を手塗りします。仕上りに影響を与える重要な工程になる下地は、刻苧(こくそ)を施し、布や和紙を貼り、下地錆(さび)を何度もつけて、砥石等で研ぎ下地を仕上げることで塗り面を整え、漆の密着度を高めます。その後、良質の天然漆を濾過し、下塗り、中塗りを経て、上塗りします。漆を塗っては研ぐ工程を繰り返します。天然漆の乾燥には湿度と温度が重要で、室(むろ)で乾燥させますが、その調整は非常に難しく、経験を要します。 |
工程4蝋色(ろいろ)漆塗りの際に出来る刷毛目が無くなり、漆の表面が漆黒の光沢と輝きを増し、鏡面の様に仕上げる技法です。下地も蝋色下地工程をふまないと出来ません。生漆を塗り、さらに磨いて漆独特の美しい輝きを醸し出します。この光沢を出すのに「炭研ぎ」から始まり、「胴擦り」「摺り漆」「角粉磨き」などの工程が必要です。炭研ぎは駿河炭(蝋色炭)を使い、なめらかにかつ、緻密に研ぎあげるもので、漆塗の仕上げを左右する重要な工程です。 |
工程5金箔押(きんぱくおし)漆が塗られてきたものに、生漆を接着剤として純金箔を貼ります。金箔を押す部分に箔押漆(生漆)を塗り、拭き綿などで全体を均一に伸ばし、拭いていきます。下地漆の乾き具合や、その日の温度、湿度を感じ取り、使用する生漆の種類や拭き具合を調整します。その微妙な漆の粘り具合が金箔押の優劣すべてと言え、「重押し(おもおし)」と言われる、京都独特の艶を抑えたむっくりとした重厚な輝きが生まれるのです。また、金箔の上に金粉を蒔く技法も京仏壇の特徴的なものです。 |
工程6蒔絵(まきえ)漆で文様を描き、金・銀粉を蒔き込み、金属色の文様で装飾する技法が蒔絵の特徴です。 |
工程7彩色(さいしき)漆、金箔、金粉などで仕上った彫物などに、粉末顔料又は岩絵具などを使い彩色を施します。彩色絵具の種類は主として緑、赤、茶、紺、紫の5原色がベースとなります。また、彩色には「極彩色」と「箔彩色(淡彩色)」とに大別されます。 |
工程8錺金具(かざりかなぐ)銅、あるいは真鍮の地金にタガネ等で彫文様を施し、やすりなどで仕上げをした後、金鍍金(金メッキ)などを施して錺金具を作ります。錺金具の技法には、大別して文様を銅版に線刻した「平金具」(毛彫り)と、透かし文様を切り抜いた「透かし彫」、そして立体的に薄肉彫に仕上げた「地彫」の三種類があります。錺金具を取付けると荘厳さが増しますが、錺金具と本体との調和を第一に考えます。 |
工程9総合組立(そうごうくみたて)各々の工程を経て仕上ったたくさんの部分品。それらを細かく点検し、調整しながら錺金具を取付け、各部を組み立てます。緻密な仕事であると同時に、経験と体力が要求されます。こうして、数多くの職方(職人)たちの精魂こめた手仕事によって、皆様が手を合わせてくださるお仏壇ができあがるのです。 |