日々雑録

仏像修理のハ・ナ・シ1『熊谷蓮生像/現状維持修復①』(全5回)

2007/10/25(木) 仏像修理の話

お木像の修復方法として、

大別すると『復元修復』と『現状維持修復』に分けられます。

前者は、下地や漆、彩色等を落とし、木地の状態に戻し修復。

我々仏具店が行う大半がこの修復になります。

後者は、その像の歴史を消さず、現状(制作当初の状態)を

より安全に保つための修復。文化財修理所はこの修復方法をとります。


双方とも、それぞれの利点があり、どちらの修復にされるかは、

お像の現状・施主側の意向・与えられた修復期間・予算などにより替わってきます。
よってケースバイケースで、様々な修復方法を採る必要性が出てきます。


今回は先日、西山浄土宗総本山光明寺で「開基蓮生法師八百回忌大法要」が行われ、
それに際し、蓮生法師の肖像を『現状維持修復』にてご修復させて頂きましたので5回のシリーズでご紹介させて頂きます。


今回のご修復での工程の流れを大きく分けますと、

①清掃②解体③害虫駆除④内部木地補修⑤接合⑥木寄外部補修⑦補彩

というような順になります。追ってご説明いたします。

このお像の現状と致しまして、全体に長年の埃や煤での汚れが見受けられ、

彩色及び下地の風化が進み、剥離していました。

また、木寄せ箇所は膠で接着されていますが、膠の劣化により、遊離が見られ、
他にも摩滅による被害や虫喰い箇所も見受けられました。

また、後世の修復跡も確認できました。


上記のような損傷箇所等を、どのような材料を使い、

どのように修復していくか計画を立て、いよいよ修復にかかるわけです。

また、今回はボンド等の樹脂系の材料は一切使用せず、桧材・膠・漆・小麦粉・

砥の粉等の天然材料のみを使用しています。


次回へ続く…


写真上:蓮生法師像[修復前]
写真下:   〃   [修復前]

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