日々雑録
仏像修理のハ・ナ・シ41『座像5寸の阿弥陀像②』(全5回)
2011/07/12(火)
仏像修理の話
ブツネタ239『いかんせん修理』
修理のハナシⅩⅧ『座像5寸の釈迦像①』
の続きです。 前回は台座と光背のお話でしたが、
今回は、主役となる阿弥陀如来像の登場です。
修理前の阿弥陀さんは、
光背と同様に、一度修理の手が入っており、
その際、漆箔層を除去せず、新たな漆箔を施していたようです。
この写真は、洗浄途中のものですが、
矢印の金色が制作当初の漆箔の層。
その周囲の黒い部分は、後世の修理での漆箔の層。
Wの漆箔層・・・。
「いかんせん♪ 嗚呼いかんせん♪ いかんせん♪」
いかんせんな修理を見たときは、ネコも杓子も唄います。
せっかくの良く出来た阿弥陀さんが、厚ぼったいお姿に・・。
ですから、そんなW下地は除去し、木地の状態に戻します。
大きな損傷はありませんでしたが、木地補修をしながら
バラバラになったパーツを接合し直します。
お顔には玉眼を固定し直し、内部より瞳を描きます。
如来の場合は、
中央に黒眼、その両サイドに茶眼で瞳を表現。
目尻には青を入れて、色の付いていない白眼は、
綿で表現。
木片と竹串で固定すれば玉眼の彩色工程は完了です。
そして、
木地修理完了時がこちら。
優しいお顔をされていますね。
さて最後に、今回の修理で特筆すべきポイント。
それは、漆箔仕上げにおいて非常に大事な工程の“肩つぎ”。
衣の奥であったり、
今回の阿弥陀さんで言えば、定印を結ばれる手で隠れる衣には、
物理的に、漆が塗れません。
現段階では、
右肩・右肘・右手・左手の部分が胴体と接合されていません。
“肩つぎ”と私共は言ってますが、
仕事のしにくい部分の漆塗りや金箔押しを先に仕上げてから、
胴体と接合します。
仏さんの漆塗りの工程において、
非常に大事になる工程の“肩つぎ”。
次回は、“肩つぎ”の工程をご紹介します。