日々雑録

仏像修理の話89『小さな青面金剛像の現状維持修理』

2022/03/19(土) 仏像修理の話

 

 

江戸時代から全国津々浦々に広まった庶民信仰である庚申信仰。

その庚申信仰で本尊として祀られるのが「青面金剛」

今回はその「青面金剛像」の修理事例をご報告いたします。

 

独特の彫刻で表現された岩座の中に、

身丈3寸の小さな青面金剛が立たれています。

最初に拝見したときは、役行者が祀られているのかと思いましたが、

小さな仏像であっても、このような祀り方をすれば、

存在感を出せますし、また安定感もあります。

また、岩がお像を守るように覆っていて保護されています。

言ってみれば、岩の厨子です。 これは理にかなっています。

 

 

さて、修理の対象は、岩の厨子を除いた、この水板(框座)から上の部分。

 

しかし、よくある話ですが、

お像は接着されてなかったものの、台座はしっかり固定されていました。

 

現状維持修理の場合、損傷している部分のみの修理となりますので、

修理の対象以外は、現状を保存する必要があります。

 

このような場合、互いに傷を付けぬように離すところから修理が始まっています。

 

 

 無事に離せました。 膠で接着してありました。 

釘や、後世の修理でエポキシ系の接着剤が使われていなくて良かったです。

 

膠はきれいに除去し、修理後は接着せず、

まわりの岩が落下防止となるので、位置決めのダボを1点仕込みました。

 

 

さて、青面金剛さんは身丈3寸。

本躰の損傷状況は、前身頃の損傷、両足先の欠損、足ほぞが合っていない、持物の損傷と亡失。

台座の損傷状況は、框と岩が歪んで固定、岩座の亡失、邪鬼の足欠失、邪鬼のほぞ穴が大きくて緩い。

光背の損傷状況は、火焔が潰れている。 あと全体的な下地の剥落等。

小さな損傷・不具合が多数。

現状維持修理の場合、仕上がってみればどこを直したのかわからなくて、

修理に派手さはないものの、丁寧な作業が求められます。

 

 

さて、まずは木地修理ですが、

 

水板から岩座+邪鬼を離し、

青面さんのホゾ穴が緩かったので埋め木をし、

赤の邪鬼の足首を補作中の画像です。補強のため、ダボを入れています。

水板と岩の接合もダボを入れ、

岩自体は、中心部分を残して三方を新たに付け増し、

青面さんが立つ邪鬼の足場を水平にならし、青面さんの足ほぞも取り替えました。

青面さん本躰は、

腹部下の衣の欠損部と両足先の補作、

拳内に詰まっていた旧持物の破片の除去と、新持物用の穴の調整 を行いました。

 

 

 

六臂のうち、二臂は、三叉檄とショケラ(人)が残っていました。

ショケラは、合掌した女性で髪をつかんでいます。こちらは彫り出し。

三叉檄は柄の部分に歪みはありましたが、修理すれば十分使える状態でした。

 

他、四臂分の持物は亡失していましたので、新たに作ることになり、

宝剣、弓、矢、はすんなり決まり、

残り1つは法輪と羂索で迷いましたが、手の構えから羂索を選択。

あと、光背の輪光は再利用し、火焔3つは新たに作り替えることにしました。

銅地で製作し、金メッキで艶消で仕上げました。

 

 

木地修理後に、古色で仕上げて

地味ですが、違和感のない仕上がりに。

 

 

光背と持物も古色で仕上げる選択肢もありましたが、

背景の岩が雰囲気ある時代色をしていますので、艶消の金メッキで仕上げて正解でした。

 

 小さいながらも手間の要るお仕事でしたが、

修理を経て、新築の祠に祀られること、非常に嬉しく思っております。

ご縁に感謝。

 

 

 

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