日々雑録

仏像修理の話68『馬頭観音像の現状維持修理』

2016/05/21(土) 仏像修理の話





私自身は初めてのご縁になります、馬頭観音像。


インド色を感じさせる、三面八臂(お顔3つ・腕8本)の馬頭さんです。


輪王座という片膝を立てた特殊な座り方をされています。


如意輪観音さんも同様の座り方をされています。


この度ご修復のご依頼を頂戴いたしました。














自然な現象である干割れ等も確認できますが、


お顔や髻に人為的な損傷が確認できます。


指の欠損はあるものの、腕や持物は現存していました。


正面は馬口印という特殊な印を結んでおられますが、指が欠損しています。


持物は、宝棒・鉞斧・法輪・水瓶、ということで
馬頭さんが持たれる持物の上位ばかりといった感じ。


京都の浄瑠璃寺の馬頭さんは蓮華を持っておられたりしますが、
これは比較的珍しいかもしれません。





あと、向左側下段は与願印を結ばれていて、


向右側下段には何かを持たれていたと思われる握り方をされています。
さあ何を持たせましょうか・・。


さて、この馬頭さんの材質ですが、白檀が最も有力。


桧で木地修理しても風合いが異なりますので、白檀を使用することにしました。


いわゆる現状維持修理ですので、損傷部分のみに手を入れます。
そのまま手を加えない箇所も状態を見て決めます。

以下、木地修理後の写真になります。


















特徴的な造りで、またお顔に個性があり、
古色にて色合わせするにしても、木地のままですので色々と難題がございます。






埋め木ができるところは白檀にて埋め木をし、
小さな穴や隙間、摩損には、白檀のコクソを充填。


やはり、今回のポイントは正面のお顔でしょうか。
何せ特徴のあるお顔で、三面のうちの真中ですし。。


以下、木地修理が完了し、開眼彩色及び古色で仕上げた写真です。














艶感を出すのに古色後表面を磨き、
元々金箔がおされていたので、3点の持物には金泥で補彩。





亡失した持物1点は、手の位置と握り方から、馬頭持物上位の数珠としました。


お仕事の機会の少ない馬頭観音さんのご修復のご縁を頂けたことに感謝。
思い出に残る一躯となりました。










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