日々雑録

ブツネタ186 「襟を正せ!!」

2010/10/04(月) ブツネタ



増長天像の胡粉下地が仕上がりました。



☆彫りあがりました★29 で彫り上がりをご紹介したのは・・・5月下旬の話。


あれから4か月・・。 時間は掛かり過ぎではありますが、


それだけの仕上がりとなっています☆








漆を摺って、

和紙を貼って、

胡粉下地を施しました。





ただ、その胡粉下地ですが、この工程が入ることで、

彫刻が埋まったり、角が丸まったりしてしまうことが

必然な帰結と認識されています。



仏師さんが、かなり気を入れて彫り上げたポイントが、

残念なことに消されてしまう。



近年は、木地彩色、木地截金など、

彫刻したそのままの姿に下地を入れずに加飾する仕上げが多いように思います。


流行りというのもありますが、下地を入れたことにより、

彫り上がりからイメージが異なってしまうことを懸念して、

下地を入れる仕上げを避けられることも多いかと思われます。



要は、その要所を生かす下地が出来るか出来ないか。

彫り上がりからイメージを変えないか!ということ。








・・・でこの増長天像はというと、

しっかりと胡粉下地が付いているのにも関わらず、

塗り膨れた感じはなく、しかもきっちり角が立っています。



この工程は、塗師さんの仕事ですが、

仏師さんがどのような思いを持たれているのか、

それを理解されている塗師さんだからこそ、

その要所を生かす下地が出来るんです。



仏師さんが彫刻されたものを、良くするか悪くするかは

塗師さんの手に掛かってくるわけなので、相当なプレッシャーを感じながらの

お仕事だと思われますが、今回の仕上がりも素晴らしいものでした。




その塗師さんが面白いことを言うてはりました。


“ポイントはたくさんあるけど、やっぱり襟(えり)は大切やね。

襟を正すっていう言葉があるけど、

ここがきっちり仕上がってないと、良くは見えへん・・・”







この増長天像の襟元は、今回の要所のひとつ。

襟を正すことで、お像自体の印象はより引き締まる。


そして、塗師本人の気持ちも引き締まったそうです。



この仕上がりを見て、後の工程の職人さんも、

身を引き締めて、お仕事をされることと思います。



そんな思いが込められた増長天像の制作はいよいよ大詰め。

今月中に仕上がりがご報告できる・・・かな。




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