日々雑録

仏像修理の話74『唸る台座・復元修理①』

2017/06/25(日) 仏像修理の話

これまでに数多くの台座を修理してきましたが、


こんなにドキドキするのも久しぶりでした。






台座が何段あるのでしょうか・・。

ちなみに阿弥陀さんは身丈8寸。






なんと総高約80cm。

このバランスにも驚きです。

こちらの仏さま、一般家庭のご本尊として祀られています。


いわゆる仕込み仏壇にお祀りになられていましたので、
これだけの丈があっても可能だった訳です。




ご覧の通り、素晴らしい彫刻の台座です。


細部を確認しまして・・・












具体的にこちらの見解をご説明させて頂きます。






まずは、下段の正面から。

【写真・下段正面】






下台の格狭間内に花の彫刻が付いています。


全体的に接着切れで外れた彫刻が定位置でないところに誤って接着されています。この花はこの場所ではないようです。



この部分には、本来、ケツバシラという彫りが付きます。

↓↓【参考写真】↓↓


明らかに亡失したようです。



この段は3面に花の彫刻が入ります。


正面は花が散ってしまったのをあえて表現している訳ではもちろんなく、


花の彫刻を付け彫りしていたのですが、亡失したようです。

弊社で製作する場合、松竹梅が多かったのですが、


↓↓【参考写真】↓↓



今回の台座は、そうではなさそうです。






次に、下段の向かって右側。

【写真・下段向右】




②③
共にケツバシラはありません。


この格狭間に付いていた彫刻のようです。
今回の修理では、あくまで台座の下台とみなし、下台の彫刻の補作は見送りました。






次に、

【写真・下段向左】






4ヵ所すべてにケツバシラはありません。



別台、台座共に地擦り框が亡失しています。
台座のほうは、虫食い被害も確認できます。



次は上段にいって、

【写真・上段中央】






この段は面白く、通し彫りになっています。


真後ろの彫刻は省きますが、それ以外は通しで草花の彫刻が施されています。
正面には付け彫りが取れてしまっています。


まるまる彫刻が亡失しています。

左右の彫刻には鳳凰(雲に鳳凰)が入っているので、
ここは間違いなく、同様に雲鳳です。



さてさて。
鳳凰と同じく、雲の彫りがあるものの付け彫り部分が亡失しています。


左右の彫刻も同じく付け彫りがありません。



玉を持った獅子。玉獅子とか玉取り獅子とか言われますが。

玉取り獅子が2匹。その後ろには天部像。


本来は獅子が4匹のはず。


どうやら、ケツバシラではなく・・・。(あとで触れますね。)


⑩⑪
実は最初に目がいったのが⑩の獅子。
それなりにこの場所で合って層にも思えますが、


⑪も獅子の彫刻ですし。⑩の獅子も定位置ではなさそう。




【写真・上段向右】






粋な通し彫りの段。
ここには付け彫りが残っていました。


葉っぱの感じからもわかりましたが、牡丹のようです。



雲になんでしょう・・・



これこれ。
天部像です。


うまいこと配置されてますが、
ここはもとは獅子が4匹いたはず。


ということは、そう、


さんざんケツバシラが付くはずと言っていたところに、
天部像が配置されます。


こんな感じです。

↓↓【参考写真】↓↓



天部像といいますか、四天王として4躯付くのが本来です。


獅子と四天王が、うまい具合に?! 2匹、2躯ずつとなり、
上段に配置されたのかなと思います。


予算を考え、獅子、天部共に新たに製作することはせず、
上手に補作し、抜けた感がないように致します。(また改めてご紹介。)


華盤(けばん)につく脚(あし)、光脚(こうきゃく)と呼ぶかたもおられます。
前側の2つは残っていますが側面のほうは亡失しています。



【写真・上段向左】






牡丹の通し彫り、牡丹であることは間違いありません。


逆側は花が残っていましたが、こちらは亡失しています。


・・・


ちょっと待って下さい。





ひっくり返すと・・・





あ! あった。 




ということで、通し彫りの牡丹の付け彫りは、正面以外はありました。


正面以外は・・


・・・・・・


牡丹・・・


あっ!


牡丹に唐獅子! 





これか~ !


ということで、
⑥の段の付け彫りは全て残っていたということになります。





彫刻の数が相当あるので、


外れてしまったら、どこの部分かわからなくなるのも仕方ありません。


外れてしまったら、どこかに保管して頂くのがベストです。




今日はこのへんで。


次回は台座の最上段の部分と、光背、そしてお木仏の状態をご紹介します。



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