日々雑録

仏像修理の話60『韋駄天像1尺2寸現状維持修理』

2015/08/26(水) 仏像修理の話



仏舎利を盗んで逃げた捷疾鬼(しょうしつき)を追いかけて取り戻したのが、

今回修理させて頂く韋駄天。


そこから、足の速い例えとしてよく用いられています。




青い稲妻  
読売の韋駄天・松本



SLの撮り鉄
横浜の韋駄天・屋鋪 



うわさのセクシークイーン(自身で発売したレコード)  
赤ヘルの韋駄天・高橋


こんな感じで・・。



そんな韋駄天像ですが、実物はコチラ。










造形的に素晴らしいお像です。

ただ、全体的に多数の欠損があり、

他に兜前部欠失、持物亡失、膝前の天衣欠失。

両腕の接合部、両手首の接合部に欠失。

合掌されている両親指欠失。


背中に内刳りされた箇所の蓋となるパーツが亡失。

台座も下框が亡失、岩座と水板も不完全な状態、などなど。





なんせ欠損箇所が多いので、

木地修理後の写真を見て頂ければどこを直したか一目瞭然。










兜の頂の宝珠こそ、挽き物で製作したのがあったので違いますが、

他は尾州桧材で補作。

台座の岩と框は、既存の高さに合わせて新誂し取り替えました。



あと、今回は像内納入品があり、


墨書き、押印して頂いた和紙を



油紙で包み、



さらに金襴で包み、



像内に納入。



蓋をして納入完了。




腰の部分にも同様な内刳りの穴がありましたが、

共に納入品は残されていませんでした。

次回この納入品が人目につくのはいつになるんでしょうか・・・。



さて、最終の仕上げです。


















今回は、お像の状態をみて検討した結果、

木地の上から直接古色を施して仕上げました。



お像の造り、仕様、損傷状況、予算、

あらゆる角度から考えまして、最善の策をご提案させて頂いております。

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