日々雑録
仏像修理の話96『小さな准胝観音像の修理』
今回、弊社にやってこられた仏様は、
小さな小さな准胝観音像。

暗い堂内に、厨子に安置されていたものの、
厨子自体が倒壊寸前で当初は全貌がわかりませんでした。
ただ、小さいながらも 眷属の難陀・跋難陀龍王がおられ、
良き仕事がされた彫刻だということは、この段階でもわかりました。
いざ、預かりますと、 その損傷具合も色々と判明。



准胝さんは、身丈1寸5分という小ささながら、
各像は緻密な彫刻がされ、波の表現も面白いです。
先ずは、光背と台座の状況ですが、
光背は亡失。
蓮台に関しては、蓮弁が亡失。
軸(茎)部分に小さな蕾や葉が数本ありますが損傷しています。
あと波の上部が多数無くなっています。
次に、本躰ですが、
材は白檀。截金で加飾されています。

まず両手が亡失しています。
そして、裳先と右ひざ辺りが割れています。
油分がなくなり、かなりサクいかんじになっています。
あと、宝冠(宝冠帯、かんざし)は、本躰が小さいだけに
かなり華奢で、すぐ折れてしまいそうな状態。なかなか厄介ですが


無事に取り外せました。
そして、ここからが今回の修理の最大の要点になるのですが、
准胝さんといえば、多臂で有名ですが、
二臂、四臂、六臂、十八臂、五十四臂、八十四臂 の説があり、
よく拝見するのは、十八臂で
ただ、この大きさなので、2臂だったりするのかな。と思ったりもしました。

側面をみると、8本の腕が接着してあった跡があり、
やはり16臂だったことが分かりました。
さてなかなか大変です。
腕はともかく、そこに持物を持たせないといけませんから。
龍王2躰は、桧で彫られていて、
こちらも両手が亡失。
足先や帽子に欠損等がありました。

ということで、ご予算とご意向を踏まえ
本躰は不足箇所、欠損箇所を補作。
光背は新誂。
台座は蓮華部分を復元修理。
波部分は現状維持し欠損部分を補作。
という修理内容に決まりました。
胸元の両手は、こちらの印相にて。


指先が写っていますが、この小ささです。

かなり難易度の高いお仕事となりましたが、


後ろの手は、4本1組で16本。
胸元が2本の合計18臂が完成。
後ろの手は、ダボ入りなので、脱落することもないでしょう。

そして、古色彩色を施し、胴体部と色を合わせます。
(向左側の手は古色後、向右側は古色前です。)

かたや、龍王像ですが、
准胝さんよりも小さくなるので、手と帽子は柘植(ツゲ)材にて補作。



こちらも同様に古色して色を合わせます。
さて、光背と台座に移ります。
光背は。木曽桧材にて新誂。

台座は、蓮華部分は木地の戻し、不足部分を補作し、
波に関しては現状を維持し、足りない部分を補作。



光背を付けるとかなり立派になりました。
下地、漆箔の工程を経て、

彩色を施し、
准胝さんの宝冠を取付け、完成です。




仏像の修理は、それぞれが唯一無二です。
仏像の種類、大きさ、仕様、傷み具合、修理方法 等々。
ただ今回の准胝観音像は、心に残るお仕事になるのは間違いないです。