日々雑録

仏像修理の話88『虫食い被害の仏像修理』

2021/05/21(金) 仏像修理の話

 

仏像修復において、虫食い被害というのは付き物。

 

虫食いの程度は様々ですが、今回のお仕事はかなりのものでした。

 

 

お預かりした時点では、怪しさはあるものの、

スポンジ状になった損傷状態を塗膜の薄皮でギリギリ隠せていた状況でした。

 

 

そして、こちらが下地を除去した画像です。

 

 

なんとも、悲惨な状況。

虫食い被害はお顔です。

 

側頭部や後頭部は後補で、過去に修理をされた形跡があるものの、

顔面は、虫食い被害が著しいものの、

製作当初のオリジナルであることから残されたものと推測。

 

 

また玉眼が嵌入されていましたが、

内部からの嵌入ではなく、外部からの嵌入で、

後世の修理において、玉眼に改造されたことも推測ができます。

 

 

しかし、これほどの損傷がお顔に、というのはなかなか遭遇しません。

 

修復前のお顔をもとに、コクソにて造形していきます。

 

 

横溝正史のアレのアレみたいでしょ。

名前が出てきません・・。

 

目の部分は玉眼を取り付けるために穴を開けておかねばなりません。

 

鼻のトップに黒い部分がありますが、

この部分も塗膜を剥がしてしまうと、鼻自体が無くなってしまいそうで

もとのお顔から雰囲気が変わってしまう可能性もあったので

ここは下地を除去する際、この部分のみ保存することにしました。

 

 

人間らしくなりました。

コクソでの成型なので、この後は強度を考慮し、

 

 木地堅め、和紙張りの上、

 

 

漆で塗り固めてからの、胡粉白地。

 

このあと、彩色を施して完成にいたります。

 

 

今回のような虫食い被害は、

木像で言えば足元等下側の部位に多く、

その程度によっては木地を取り替えることも選択肢に入れるのですが、

今回は、お顔という非常にデリケートな部分であるので、新材に取り換えることはせず、

既存のパーツを残すことを優先し、コクソにて成型する方法をとりました。

 

 

 

 

 

記事一覧

1ページ (全101ページ中)

ページトップへ