日々雑録
仏具修理の話25『扉に負担★蝶番扉厨子の修復』
弊社で、仏具修理の中で最も多いのが、お厨子。
諸仏を祀るのに重要なお厨子が損傷していて気になられているお寺院様も少なくないと思います。
厨子で損傷しやすいのが、扉。
蝶番や打ち掛けの金具が外れていたり、
扉に割れが生じていたり、
長い年月で扉を開けあり閉めたりするわけですので、負担がかかるのは仕方ありません。
今回の修理のお厨子も扉に損傷がありました。
大型幅広の丸厨子です。
扉のカドに亀裂が入っています。
木地を剥ぎ合わしている部分ですし、
扉自体に重みもありますし、八双の金具も付いて、傷みやすい部分ではあります。
内部は、立派な扉絵と、存在感のある幕板が付いています。
開けた扉に白い緩衝材を丸めて挟んでいます。
どうしても、蝶番で留められる扉は扉が下がってきて、
扉を閉めた際に床板に擦れて、塗り面を傷つけることもしばしば。
蝶番でなく、軸廻しの扉ですと、そういった損傷は回避できますが、
↓過去の軸廻し扉の木瓜厨子のお話↓
丸厨子や木瓜厨子の殆どは、蝶番で扉が固定されています。
今回の扉は、蝶番を留める鋲(釘)をただ打つだけではなく、
鋲をかしめている(貫通させて、突き抜けた部分を叩いてつぶし抜けなくしている)ので、
扉が外れるところまではいかなかったようですね。
今回の修理でも、蝶番での扉の取り付けになりますので、
同様に鋲をかしめて、金具で隠します。
今回のお厨子は、まだ他に損傷部分がありました。
なんとなく、怪しいのわかります?
ここです、ここ
穴がありますね。虫食いです。
その周囲が補修されてます。。
塗りを研いでいくと、そこそこの虫食い被害がありました。
地擦り(じすり/最下部の框)ですので、ここは木地修理の対象となります。
木地修理は・・
虫食い部分の木地を取り換え
扉の亀裂部分は、チギリを入れて留め直し
あと、厨子の修理の場合は、
塗り替えたあとに、塗り膨れで取り付けに支障が出る場合がありますので、
扉木口の既存の塗りや下地を、研いで落としておく必要があります。
木地修理が完了すれば、
一通りの確認をしまして、次工程の塗師の手に委ねます。
塗りの工程は、割愛しまして
こちらが塗り上がり。
幕板は、白地で、浮面部分に漆を塗り、金箔を押した後に復元の彩色を施します。
塗り上がった本体は、取り付けに支障がないか仮組みを行った後、
金箔を押し、扉絵も復元にて彩色を施します。
錺金具は補修し、メッキをし直し、
蝶番の裏金具は新しく作りました。
裏金具は、彩色を干渉しないように何とか」取り付けが出来ました。
京都らしいお仕事が出来たように思います。
ご縁に感謝。