日々雑録
仏像修理の話70『身丈2尺4寸・地蔵菩薩座像の修復①』
今回は、昨年修復させて頂いた地蔵菩薩座像のご報告です。
身丈は座像2尺4寸。
小柄な女性ほどの大きさ、そうですね、うちの嫁さんといい勝負です。
肌は白塗り、黒衣のお地蔵さん。
現状、本体は、全体的に下地が剥落しています。
持物の錫杖、宝珠は現存してます。
錫杖は長く見えますが、裳先まで下げて少し傾けばいい感じになりそうです。
胸飾りは、金属製。そこそこ立派で保存状態も良好のよう。
台座と輪光は、25年程前に作られたとのこと。
本体がどこまで傷んでいるかは、預かってからのお楽しみ。。。
本体に関しては、下地を除去し、木地に戻す復元修理。
あと台座に関しては、安置場所が狭いことから、框の上に直接蓮華が乗る造り。
仕方ないとはいえ、イレギュラーで、略したのが見え見えなので、
蓮台と框は再利用して、敷茄子と反花を補足することにしました。
まずは、下地の除去から。
大きなお像にもかかわらず、木地の遊離が見受けられないところから、
釘や鎹(かすがい)などが打たれている可能性は高く、
とりあえずは水に浸けず、刃物等で下地を除去することにしました。
大部分に和紙が張られていましたが、
和紙の木地への接着力が弱まっていたことから、
比較的除去はしやすい部分がありました。
木地に、補強のための和紙張り、その上から胡粉、
そして衣には黒彩色。肌部には白彩色。
それを踏まえたうえで、、、
下地を除去していくと・・・
足裏には肌色。
衣に橙色が残っていました。
下地を除去することで、過去の修理が見えてきて、
過去の仕様であったり、様々な物語が見えてきたりします。
修理において、下地を除去せず、上から上から塗っていく“いかんせん”な修理(とっても残念な修理)が多い中、
このお地蔵さんの前回の修理は、下地を除去し、木地に戻し解体までしたということがわかります。
手の傷に下地が埋まっています。
普通に考えれば新調の際には傷はなく、下地が傷に埋まるはずもありません。
こういったところでも、修理の手が入っていることがわかります。
あと、底をみますと・・・
裳先の木地が明らかに色が違います。
あと、こういった釘で修理時期がわかったりもします。
木釘や竹釘で止められているものもあれば、
このように鉄釘を恥じらいなく打ってあることや、
補作した材に杉板をしようしていたことは、
前回の修理は素晴らしいものだったとは、
お世辞でも言えないというのが私の感想です。
まだまだ、修理工程は序盤戦。
次回以降、数回に分けて、ご報告いたします