日々雑録
合掌★仏壇手を合わそ24「小さな弘法さんの礼拝壇②」
前回からの続き・・
お厨子の修理は比較的多いお仕事ではありますが、
これほど小さいものは初めてです。
この厨子の現状としまして、
金箔の擦れ、屋根部分の木地の損傷が確認でき、
他、下地の剥落等は全体的に確認が出来ました。
ただ、錺金具も亡失はなく、
また大きな損傷はないというのが修理前の考察です。
この厨子は、小さいながらもバランスが良く、大きさに比例して、
扉も厚さも非常に薄く出来ています。
錺金具も小さくても丁寧に作られており、幕板も同様です。
この幕板は、非常に小さくても、丁寧に金泥で唐草の文様が描かれ、
蓮の盛上げ彩色が見事です。葉脈や花弁の筋も綺麗に描かれています。
この素晴らしい幕板が、無傷で保存されていることには驚きました。
この幕板の復元は出来るとしても、そこそこの予算が掛かります。
厨子本体は修復しても、何とかして幕板は現状を維持しなければならないというのが、この厨子修復のポイントです。
ただ、難点なのが、後世の修理です。
接着がゆるみ、接着をされたのでしょうが、ずれて接着がされています。
そして、はみ出るほどの十分な接着剤を使用しての接合。
これが、難題の1つでした。
厨子を修復(塗替え)するためには、幕板を取り外さなければなりません。
また、厨子は歪んで接着されているので、一度取外さなければなりません。
しかし、幕板は現状を維持するために傷を付けることは出来ません。
解体するところから結構ハードルが高かったのですが、
いろいろと試行錯誤して、無事に解体することが出来ました。
写真は、木地修理後のもの。
こちらは取り外した金具。
金具はメッキ替え。
厨子本体は、漆を塗替え、金箔を押すという通常の流れではありますが、
今回ばかりは、金箔を施してからの金具の取付が困難だと思い、
蝶番と掛金具の軸だけは箔押し前に取付け。
昔(昭和中期くらいまで?)の小型の厨子の多くは、
この手順で製作されているものが多いように思います。
蝶番の貫通した鋲を隠す押しピン式の裏金具も製作はしたものの、
取り付けると返って不自然になるのでやめました。。
金箔が押し終わり、あとは残った金具の取付です
蝶番や打ち掛けの軸の取付が完了しているので、あとはスムーズかと思っていましたが、最後の難関が待っておりました。
★持っている鋲が長すぎる★
扉の八双金具と定木の金具にも鋲穴があり、
それを留めるためにはかなり短めの鋲が必要です。
弊社では、小さな仏さまの台座も製作する機会がありますので、
かなり短い鋲も確保しています。
下の長い方の鋲は1分5厘(4.5mm)
一応、弊社にある最も短い鋲になるのですが、これでは貫通してしまいます。
まさか、鋲で苦労するとは・・・。
ということで、
この鋲を半分以上切断し、ヤスリをかけて極短の鋲を製作。
この状態から、またさらにヤスリをかけています。
鋲の頭を傷つけないように、なかなか大変な作業でした。。
そしてこの通り。
現状を維持した幕板を取付けて厨子修理は完成に至りました。
最も大変だった厨子修理は以上です。
この小さな厨子が、どのように演出したかは次回ご紹介いたします。