日々雑録
仏像修理の話78『柘植の観音さん、どこを修理したの?』
2018/01/13(土)
仏像修理の話
今回は、聖観音像の損傷部の部分修理をご紹介します。
在家用の聖観音。立像で身丈5寸(生え際までの高さが15㎝)。
今日は、修理後の写真から見て頂きます。
修理後といっても、光背が大きく欠損しています。
今回、こちらは修理の対象ではありません。
修理したのは本躰、聖観音像です。
実は、台座・光背・本躰が、“かなり”がっちり接着されています。
(接着剤の固定は、修理において難題になるばあいがあります)
無理に外そうとすると、透かし彫りの光背は強度が弱く、
傷めてしまうかもしれません。
検討はしましたが、
当初のお客様のご意向通り、本躰のみの修理をさせて頂きました。
・・・でどこが傷んでいたか
木仏で傷みやすいのは、指。
その次に耳朶。
仏の耳たぶには穴が開いていて耳朶環(じだかん)とよばれています。
今回は環になってないですが、輪になっていると強度が弱く欠損し易いです。
あと、
観音さんの場合は、
天衣をまとっているので、この部分も非常に損傷し易いです。
損傷しやすいので気をつけてね★ということを言いたいのではなく、
どこを直したかわからなければ、
それは我々にとって、良い仕事をした☆ということになります。
仮に、指が欠けたとして、指を補作したのはいいけれど、
明らかに形状が不自然だったり、
あ!ここ修理しているな!というのが目立つようではいけません。
補作したところは、人工的に色を着けて目立たぬようにするのですが、
残された部分の状態(修理しない現状を維持している部位)によっては、
多少の色や風合いの違いは出ます。
・・・でどこを直したのか
こちらです。
正解は、右手の中指、左手首から手、そして左手に持つ蓮華。
蓮華に関しては、丸ごと亡失していたので新しく作りました。
材は、柘植(ツゲ)。
とっても白い色をしている木ですが、
時代の色が付いて、ここまで濃い色になりました。
普段、柘植の材を使用することはほとんどないのですが、
出来れば同材で補作したかったので、入手しました。
左手は肘辺りから切断していたので、
腕釧(わんせん/装飾品・ブレスレット)も彫り出しています。
改めて申しますが、
台座と光背と本躰が接合されてしまっていますので、
特に光背が外れないのは、仕事がし辛いのは言うまでもありません。
とっても丁寧に彫り出し、接合面がとってもきれい。
でも、このままといわけにいかないので、
この後、既存の部位との色合わせをしました。
色を作って、着色をするわけです。
そして、こちらが修理前の状態です。
左手にはボンドがたっぷりと・・・。
取れてしまった後、接着されたのでしょうが、
そのパーツは亡失してしまったのでしょう。
水性のボンドでしたので、湿らせて除去することはできました。
水性でない接着剤を使われていたら、
さらにややこしい修理になっていました。
右手は中指の1本が折れてしまっていました。
ということで、
おそらくどこを直したか、気になられなかったことと思います。
決して派手なお仕事ではないですが、技術力のいるお仕事です。
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