日々雑録

ブツネタ257 「六角型厨子も完成。」

2011/10/21(金) ブツネタ



完成ラッシュラッシュラッシュ★


六角型厨子が完成しました。



ブツネタ243 「六角型厨子の制作。」

ブツネタ245 「六角型厨子塗り上がりました。」



塗師さんの工程が完了してから、久々の登場になりました。




漆が塗り上がった後は、

蝋色師さんに渡り、





屋根、胴、扉、地覆の全てに蝋色を施してもらいました。




厨子の大半は、内部を金箔押しで仕上げますが、

今回の厨子は、戸裏も含め内部を全て黒蝋色で仕上げました。


・・・というのにも訳があって、

今回の厨子の戸裏には蒔絵が入るんです。




そもそも、蒔絵が入るならということで、

この六角型の厨子をご提案させて頂きました。


春日型、隅切春日型のお厨子を制作する機会が多い中、

何故に六角型なのか・・。





下の図は、厨子のおおまかな平面図。


上が今回制作した六角型。 下が隅切春日型の厨子です。





緑の線は扉、

赤の線は扉を開けて正面から見たときに見える向板を指します。



六角型は三面鏡のようになっていますから、

扉を開くと、6枚の板が正面から全て見えることになります。




戸裏にはメインとなる絵を描き、

向板3枚にも蒔絵を散らし、図柄が繋がるように絵を表現してみたくて

この六角型の厨子ということなんです。




図案は、




桜&燕  楓&鹿 

“春秋”を表現した図案。

ご寺院様にご縁のある桜と楓を取り入れました。







そして完成したのがコチラ。

力作です。







向右には、桜の木に燕二羽が飛び交い、





向左には、せせらぎ近くにある楓の木。その近くに鹿が歩く絵。




非常に趣ある蒔絵が完成しました。




そして、このお厨子には、お木仏が入るのですが、

仏さんを入れるとこうなります。





この阿弥陀さんは、次回ご紹介しますので今回は割愛しますが、

西本願寺派の阿弥陀如来像です。

戸裏に阿弥陀さんの映り込みも良いですね。






もちろん、この厨子の特徴である蕨手も、

全体のバランスも格好良く仕上がりました。

蒔絵も入りますので、黒以外の色漆は多用せず、
極力シンプルに仕上げました。







また、上部の連子枠は、



岩絵の具を厚ぼったくならないように塗り、




枠に取付。 後ろ側は黒蝋色で仕上げています。

ちょっとしたことですが、こういった塗り分けや取付にも大変気を遣います。




最後に、錺金具。





錺金具には模様は彫っていません。

いわゆる魚々子(ななこ)のみ。


魚々子とは、刃が小円となった鏨(たがね)を打ち込み、

金属の表面に細かい粟(あわ)粒をまいたようにみせる技法。

魚の卵をまき散らしたようにみえるので魚々子と呼ばれます。



この魚々子のみの彫りを素魚々子(すななこ)と呼んでいますが、


模様がない分、地味に見えるかもしれませんが、

1粒1粒を打ち込んでいくというかなり手間と技術の要る内容なんです。


あえて、素魚々子。


今回のこの六角型厨子では、とことん拘らせて頂きました。



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