日々雑録
仏像修理のハ・ナ・シ47『西派・台座光背の修復』(全1回)
前回、修理のハナシ22 では阿弥陀如来像の復元修理のお話でした。
今回は、その阿弥陀像の台座と光背の修理のお話です。
台座は、西派の本山型。
華盤の下には獅子の彫り。
蓮華は截金(きりかね)仕上げ。
正八角形の台座。
なかなか、拘りの感じる台座です。
一方、光背の方は、
身光がなく、頭光のみ。
八葉と、雲の彫りが入った輪光は良く彫れているのですが、
やはり身光がないのが気になります。
今回の修理では、
台座は、基本元通りですが、一部仕様を変更。
光背は、頭光は再利用し、身光は新たに制作することになりました。
錺金具を取り外した後、水に浸け下地を除去します。
立像1尺8寸5分の本山型台座。
台座のパーツの多さはなかなかのものです。
、
台座と、
光背(頭光)の彫刻の下地除去後です。
木地を傷めずに下地を除去。
思っていた以上に時間がかかりました。
この台座光背、実は谷口の初代が納めたもの。
昭和の中期制作のもので、
木地の状態は非常に良く、目立った損傷個所はありませんでした。
台座は接合をし直し、蓮弁にはダボを付けました。
蓮弁は岩緑青彩色のあと、截金を施すので、
蓮肉と蓮弁を別々で仕上げ、最終に取り付けます。
一方、光背のほうですが、
身光を尾州桧材を新たに制作。
火焔の透かし彫りを施し、
木地修理が完了した既存の輪光を取り付けました。
木地修理(身光は新調)が完了した後は、
塗師の手に渡り、胡粉下地のあと、漆を塗りあげました。
台座の蓮肉は蓮弁が取り外せるようにしていますので、
蓮肉にも箔押しで仕上げます。
段数の多い台座なので、小足は朱塗りにし、
お獅子さんは、この写真では不在ですが、
元は金箔だったのを岩彩色に仕様を変更することにしました。
箔押しが完了し、台座を組み上げ、光背を固定し、
截金が仕上がった蓮弁を取り付けて完了です。
阿弥陀さんを安置すると、
新調した光背とのバランスも◎
お獅子さんも良い存在感が出ました。
正八角の台座は、後ろ側にも全て金箔押し。
修理前と同仕様。
なかなか贅沢な仕様です。
さて、台座・光背の修理に際し、仕様を変更することは珍しくありません。
今回で言えば、
・光背(身光)の新補。
・台座獅子の仕様変更。(金箔押し→岩彩色)
・台座小足の仕様変更。(金箔押し→朱塗り)
・光背(輪光)の地すき部分の仕様変更。(彩色→砂蒔きの上、金箔押し)
・・の計4点の仕様変更をしました。
むやみに仕様を変更することはありませんが、
様々な修理や制作をさせて頂いていますので、
その経験を生かし、より良い仕上がりを考えながらご修復をさせて頂いています。