日々雑録
ブツネタ499「白檀塗りの蟹香合」
2025/07/05(土)
ブツネタ
香合の製作機会は多いほうだと自負しておりますが、
今回の香合は、意外と製作機会が少ないのではないでしょうか。
正式名称はわかりませんが、通称「蟹香合」とよばれる
床置きの彫入りの香合が今回ご紹介するお仕事になります。
本願寺派では、蟹香合の問い合わせを何度か頂いたことがあります。
そもそもは、堆朱(漆を何層も塗り重ねて彫刻)の香合が元であったと思われます。
堆朱自体が技術的にも費用的にも困難となり、
木彫で漆塗りの「蟹香合」が増えたのだと推測します。
今回の蟹香合は、尾州桧をロクロで挽き、彫刻を施した後、
朱塗りではなく、白檀塗りで仕上げます。
こちらは1次彫り上がり時。
綺麗な彫り上がり。
ですが、漆塗りで仕上げるので、この上からの漆塗りを考えると・・
ということで、彫師さんになんとかお願いして、
さらに深く彫って頂くように依頼。
大分攻めてくれはりました。
蓋の内側には、寺紋を彫らせて頂きましたが、
空に透かすとその責め具合がよくわかります。
下地を付け、研いで漆を塗ります。
やはり深彫りしてもらって正解でした。
そして、金箔押し。
陰影がつくと彫りの深さがわかります。
この状態でも素敵ではありますが、白檀塗りなので、朱合漆という透き漆を塗り上げます。
彫りの凸部と凹部で、濃淡がくっきり出て
陰影がはっきりし、白檀塗りの個性が生かされています。
そして、白檀塗り完了後に、再度箔押師に戻し、
内部に金箔を押し、ようやく完成になります。
白檀塗りを久々にしましたが、やっぱりその風合いは独特ですね。
たまたま、白檀塗りの別の仏具を現在制作中ですので、そちらも改めてご報告いたします。
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