日々雑録
仏像修理の話84『過去の修理が見え隠れ②』
2019/06/17(月)
仏像修理の話
『過去の修理が見え隠れ①』の続きになります。
木地修理が完了したというところまでお話しました。
今回のお仕事では、框のみを取り替えました。
当初は、彫りの内容を見て他の部位も取り替えることも考えましたが、
費用面を考慮し、そのご提案は遠慮しました。
彫刻が荒れてるので、框3段ともを新誂しても良かったかなとも思います。
最下部の框に関しては、既存の状態ですと非常に気持ちが悪いんです。
なぜなら、こういった台座の場合、
しゃくり面のある框か、小足が付いた框が定石と考えるからです。
しゃくり面のある框というのは、
こういったもの。
あと、小足付きの框というのは、
こういったもの。
何が言いたいかと申しますと
最下部が、この形式でない場合は、
元々の台座を改造されている可能性が高いです。
その多くは高さ調整。
低くするために改造されていることが多いです。
ですから、このままですと違和感を持つわけです。
今回取り替えたのは、しゃくり面の框。
仏壇内に安置される場合、
仏壇内に納まることと、仏さんのお顔の位置がとても大事になります。
なので、元の框と同じ高さにて、新しい框を用意しました。
木地修理後は、塗師の手に渡ります。
大事なのは、膠の下地であること。
ネズミ色は胡粉地。黄土色は砥の粉地。
どちらも膠と混ぜて下地となっています。
膠の下地を使用することにより、
後世の修理で、木地に戻すことが可能です。
これを、膠ではなくサフェーサーを直で吹付けようものなら、
木地まで戻す修理は非常に困難になります。・
弊社は京都での製作に重きを置いていますが、
この膠下地にも非常に強い拘りを持っています。
下地工程が完了したら、箔下の漆を塗り、
金箔を押して、蓮華には彩色をして完成に至ります。
修理前は金箔だった蓮華も、
下地除去作業中に、金箔の層の下には彩色の層があったのを前回にもご紹介しました。
(タイトルはこの要素が強いわけですが)
筋彫りされた蓮弁には、筋のトップに金線を入れるしかありません。
金線が通常よりも少なく感じるのは、そのせいです。
ですが、今回も無理をしてでも截金にて仕上げました。
(金泥より截金の方が絶対かっこ良い★)
あと、蓮台ですが縁に蕊(シベ)の彫りもなく、
天場に種(タネ)の彫りもない、ノッペラボウ化した蓮華ではありますが、
仏さんが立たれたときに、寂しいので、
見える部分だけ、タネの表現はしています。
こちらが、修復後になります。
修復をすることで、全てが露わになり、
過去の修理や経緯を探ることが出来、この修理の醍醐味と言えます。
そのなかで、お客様に喜んで頂けるよう、
工程のレポートを残し、説明することが大切であると考えています。
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