日々雑録

ブツネタ465「桑拭漆 隅切春日厨子★完成」

2021/07/04(日) ブツネタ

 

 

ご依頼頂いたのは昨年の暮れでした。

お仕事が詰まっていたので、大分お待たせすることになってしまいましたが、

ようやく 特注のお厨子が完成に至りました。

 

 

厨子の扉丈は7寸。

お位牌を祀る小さなお厨子です。

 

形状は、隅切の春日型。

材は桑。

仕上げは、拭き漆。

 

これだけを活字にしただけでも、ワクワクする感じです。

 

(桑材と図面)

 

桑となると、銘木の中でも高級な材。

 

しかも、今回は非常に杢目が細かい上に、

桑では珍しい “縮杢” の入っている材で製作させて頂きました。

 

 

 

 

 

さて、こちらは向板。

扉を開けた時に正面に見える壁に使用する板です。

 

向板以外の扉や屋根、床板などには柾目取りし、

迷いましたが、 扉を開けた正面のみ、板目の筍杢としました。

 

 

いっぽう、こちらは屋根上部。

数種類のカンナを使い、屋根のアールを成形していきます。

 

 

カンナ掛けだけではなく、全般的に言えることですが、

仏具で製作することの多い桧や松などの針葉樹と違い、

広葉樹の桑での製作は、めちゃめちゃ手間と技術が必要になります。

今回の厨子で言えば、桧で製作するときと比べて3倍いや、それ以上位の時間を要します。

 

さらに、下地を入れることをせず、生漆を擦り込み、拭き取り、さらには研ぎも入れて、

それを繰り返す拭き漆仕上げの場合、

木の表面の仕上がりが悪ければ、その粗が逆に目立ってしまいます。

 

高級材を生かすも死なすも、仕上げ次第。

他にない杢の銘木厨子の仕上げには、非常に気を遣います。

 

 

 

さてこちらは、屋根の内部。

 

六角に組んだ接合部の小口にミゾを突き、雇いざねを入れて補強。

雇いざね留め接ぎ と呼ばれる継手としては一般的な工法ですが、

 

剥ぎ合わせている部分には全て、この留め接ぎを施しています。

 

 

さらに、この矢印の板の部分。

隅切の六角の枠内に合わせて、板を落とし込み接着しているのではなく、

枠内にミゾを加工し、

木が自由に伸縮できるスペースを作ってやります。(斜線のところに板が入っています)

 

この造りを施すことで、

木が伸縮しても接合部に支障をもたらすことを防ぐことができます。

仕上がれば隠れてしまいますが、大事な仕事です。

 

 

 

あと、ポイントをもう一つ。

 

今回の隅切の厨子の隅切の扉部分を

「唐草の透かし彫り」で仕上げます。 

 

これが彫りあがりです。

 

扉丈7寸ですから、丈は7寸。

小さな部位ではありますが、仕上がれば重要なパーツとなります。

 

 

 

そして、木地完成時がこちらです。

 

 

木地のままでもいい感じではありますが、

長期的に考えれば、表面処理は必須になってきます。

 

また、今回の素晴らしい木目を生かす為にも、

拭き漆の仕上げは良かったように思います。

 

 

経年で色の変化も楽しめるのが、銘木仏具の良いところです。

 

 

最後に、位牌を安置した画像を。

 

この厨子に安置する位牌ではありませんが、

弊社オリジナル位牌「神代欅 無地楼門」を置いてみました。

 

 

いい感じです★

 

 

 

 

 

 

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