日々雑録

仏具修理の話21『聖天厨子の修復』

2020/01/13(月) 仏具修理の話



今回の仏具修理は、聖天厨子です。

「聖天」という2文字が付くだけで、いつもより気が張ります。。





聖天さんは仏教の天部にあたり、歓喜天とも呼ばれます。







体は人、頭部が象(象頭人身)で2躯が抱き合っている、という特異な姿は、

本やネットで見ることはあっても、実際拝見することはまずありません。

なぜなら、聖天さんは、必ずといっていいほど秘仏として祀られるからです。



また数多くの仏像が厨子に祀られますが、

阿弥陀像を祀る厨子を阿弥陀厨子、
観音像を祀る厨子を観音厨子、
とは呼ぶことはありませんが、


この聖天さんに限り、
「聖天厨子」と固有の名称で呼んでおります。


それだけ、この「聖天厨子」は特別な厨子であることがわかります。




弊社も、比較的、聖天厨子の製作は多いほうで、

製作事例①

製作事例②

他にも事例はあるのですが、
概ねこのような形状の聖天厨子のご縁を頂きました。。





またこちらの画像は、弊社製作のものではありませんが、

シンプルながら荷葉の彫刻が素晴らしく、また輪宝の打掛けがユニークで、


是非参考にしてみたいと思い、画像を保存しておいた聖天厨子です。





この分も含めて、

蕨手付きの屋根、屋根上に宝珠が付く、丸型である、
扉には錠が付く、荷葉(蓮の葉)型の台座、

などが共通する特徴でしょうか。。






前置きが長くなりましたが、今回修理させて頂いた聖天厨子はこちら。




これまで見てきたものと比べると非常にシンプル。

色んな拘りを削ぎ落とした仕様とでも言いますか、

それでも、きれいに修復すれば素敵な厨子に生まれ変わります。




まずは、木地修理から。

損傷具合は、



胴部背面に割損があり、何かの拍子で屋根が崩れ落ちそうな状態。




礼盤(下台)に数か所の欠損がありました。ネズミによる被害にも見えます。


シンプルな形状ではありますが、礼盤には三弁宝珠と



聖天さんならではの大根の彫刻が4つ施されていました。

これがあるだけで、十分聖天用というのがわかります。





あと、片方の扉が
下の画像のように歪みが生じていて


大きな隙間が出来てたので、再利用は不可。 扉1枚は取り替えました。





他に、厨子床板と、地覆を取替え、天井を補作。

屋根の宝珠は新しく新誂。

礼盤の欠損個所に埋め木をし、木地修理は完了です。


そうそう、

あと、2点のダボを設置。



もとは台に厨子を置いているだけだったので、これでしっかりと固定。


その後、塗師の手の渡り、

下の写真は漆塗上がり後のもの。蝋色下です。





もとは、厨子が朱、台が黒と溜色でしたが、朱は溜に統一。


塗上がり後は蝋色師へ。

外部は総蝋色。

厨子内部は摺り上げの上、金箔押し。

台の彫刻には、純金鈖を蒔き、

最後に金具を取付けて完成に至りました。










アールがあると光を拾いやすくて、蝋色のし甲斐があります。


あと、よく見るとわかりますが、
丸屋根が、若干歪んで見えます。

今ですと、

弊社の木地師ですといわゆる挽きもの、轆轤(ろくろ)によって成形しますが、


昔は、轆轤がなかったので、
手で削りながら仕事をされていたのがわかります。


(まあ、手でももっときれいに成形される職人さんもいたでしょうが。。)


今回は、聖天厨子の修理のお話でした。








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