日々雑録
仏具修理の話19『台灯篭の修理あれこれ』(全1回)
今回は台灯篭のおはなし。
たまたま、台灯篭の修理が続きました。
まずはこちら。
六角型の台灯篭。高さ3尺。
明治期のもので、今の既成のものとは少し形状は違います。
損傷は多数。
何度か倒されたのでしょうか、数か所に歪みがあり、基台、火袋、笠が不安定な状態で重なっていました。
露盤宝珠、鈴なども亡失。
全体的な傷みと亡失により、修理の費用を考慮すれば、
新誂という選択肢もありましたが、
皇族と縁のあるお寺で、火袋に菊の紋があることから、
今となれば貴重ですのでこちらを生かし、
修理してお使いいただくことをお勧めいたしました。
台灯篭は、灯篭台が付きものですが、
台灯篭と灯篭台のバランスが悪いことは珍しくありません。
今回の灯篭台も、天板から台灯篭が僅かですがはみ出る感じに。
見た目的に不細工なのと、灯篭がずれて転倒しないとも限りません。
前にご紹介したことがありますが、
ブツネタ413「灯篭台の製作①」
ブツネタ414「灯篭台の製作②」
弊社では、灯篭台には天板に縁を付けるようにしています。
そうそう倒れるものではありませんが、安全のためです。
ということで、灯篭台は縁付きで新しく製作。
そして、生地を直し、亡失分を新誂し、
漆で着色し、完成したのがこちら。
十六菊が効いてますね。
あと特筆すべきなのは、
昔の台灯篭は、
基台と火袋と笠が、ただ乗っかっているだけのものが多く、
結構不安定なものが多いです。
このように多少不細工かもしれませんが、
ビスで固定してやれば安定します。
現代の台灯篭では全てではないかもしれませんが、
ただの置きっぱなしではなく、
ズレ止め、固定ができるようになっています。
灯篭自体の安定と、灯篭台との安定を考えなければならないですね。
次に、こちら。
寛通型の台灯篭。小ぶりで高さ2尺。
こちらは状態よく、大きな傷みは見受けられませんので、
漆での着色直しがメインのお仕事になります。
既存の着色された漆を剥がし、新たに色を着けなおします。
ここまできれいにお使い頂いていれば、修復個所も少なく、
また仕上がりも、尚良いものとなります。
あと、もう一つありました。
こちらは高さ3尺5寸。
地震で転倒。
半対のみをお預かりしました。
かなり強い衝撃で、火袋は大きなダメージが。
蕨手も折れてしまい、露盤の宝珠も火焔が・・。
火袋と火焔の傷みは大きいですが、
それ以外の部分には大きな損傷がなかったのは幸いでした。
漆を焼き付けて着色し直す場合、今回のように片方だけ直すとなると、
もう片方と色が合わなくなるので、1対として両方を着色し直すことになりますが、
天災や不慮の事故での思いがけない事故となると、予算の問題も有り、
今回の場合は、目立たぬ場所に置かれる台灯篭なので、
片方(半対)のみの修理箇所のみを修理、色着け直しをすることになりました。
ひしゃげた露盤宝珠と、
ひしゃげた火袋は、
たたいて歪みを修正し、割れた部分は溶接し、
火を入れた部分は漆がとれてしまうので、部分的に漆を焼き付けて着色。
台灯篭は、現代でも江戸年間以前に作られたものも多く残っており、
オリジナル性の強いものも多く、できるだけ修理をして残されることをお勧めいたします。