日々雑録
合掌★仏壇手をあわそ28「厨子型仏壇と8寸阿弥陀立像」
仏壇買い替えのご依頼でご来店頂きました。
今回のお仕事は、専門性が高く、弊社の手腕を発揮できる、そんな内容です。
まず、こちらは施主様のご本尊。
お身丈8寸の阿弥陀如来像。総丈は50㎝あります。
こちらのお木仏を継承することが施主様の第一のご意向です。
歴史あり、素晴らしく彫刻がされた阿弥陀様。
弊社としても、そのようなご意向を持たれていることに嬉しく思います。
ただ、総丈50cm。 既製のお仏壇では安置することは不可能。
別注もしくは、改造するしかありません。
こういった場合、弊社では、
ご本尊を優先し、台座や光背を、改造したりもしくは取り替えたりして
高さを調整することを提案することがしばしば。
今回もそのようなご提案も致しましたが、
台座光背も現状のものを引き継ぎたいというご意向でした。
さらに、将来ご子息の手に渡るときのことも考慮され、
出来る限り大きいものでないお仏壇を、という思いもお持ちでした。
その点を加味し、ご提案させて頂いたのがこちら。
地袋付き仏間に、厨子型仏壇(春日型厨子)の三面図です。
お木仏を祀るにはこのような厨子型仏壇が非常に映えます。
寺院仏具の製作を主としている弊社にとっては、このような厨子のご提案はお手のものではありますが、
一般のお客様のご意向にはまることは少ないのが現状です。
ご提案した厨子の総丈は、引違い戸付きの下台を含めて90㎝。
仏壇でとしてみれば、小型といえるでしょう。
漆塗りの使用はご意向に合わなかったため、銘木数種類のご提案をさせて頂き、
欅にて製作することになりました。
さて、一旦仏壇の話は置いときまして、ご本尊のお話に移ります。
弊社では、
既存の漆や下地を除去して、解体し木地に戻す修理を復元修理と呼んでいます。
かたや、
損傷した部分や亡失した部分を、補修・補作し、それ以外は既存状態を残すことに重きを置く修理を
部分修理や現状維持修理と呼んでいます。
今回のご本尊は、損傷個所はあるものの、状態良く保存されていたので後者の修理方法をご提案しました。
今回のご本尊の損傷状況は以下の通りです。
①指の欠失
(両手で計3本の指が欠損していました)
②舟型光背の先が欠損
(欠損したパーツは保存)
③後世の修理による歪み・がたつき
(遊離したパーツを誤って固定)
④漆や下地の剥落
(最下部の地擦りの下地が剥落し、木地が見えています)
お木仏の損傷の上位に占めるものばかりです。
それぞれの修理報告は以下の通りです。
①指の欠失
指を補作して、補色。
右手首の亀裂が目立たので、
下地で表面を整えて補色。
②光背先の欠損
保存してあったパーツを接合し直し、
それに関連する僅かな下地の剥落個所に漆を塗って、
その漆を塗った部分に金箔を押し、
古色彩色で色を合わせました。
③後世の修理による歪み・がたつき ④漆や下地の剥落
この修理は一度解体する必要があります。
地味ながら、実は一番厄介な作業。
水性でない接着剤や釘で固定されたパーツを傷つけずに解体するのは非常に困難です。
こういったカッチカチのやつです。
再接合するときも邪魔になるので、ペーパーで除去します。
最下部の地擦りは、塗り替えるので木地の状態に戻しました。
正面を合わし、歪みは解消。
最下部のみ漆を塗り替えます。
そして、部分修理後がこちら。
パッと見、どこを直したかよくわからないのですが、
既存の状態を保存しながらの修理は結構気を遣います。
ということで、ようやく納入後の写真です。
ご本尊の両脇には位牌が置かれます。
火灯窓が誇張せず、さりげなく付けていて、
一般仏壇と考えて、LEDのスポット灯を内部に取り付けました。
長年お祀りいただいてきたご本尊を、
また次の世代に残し伝えていくお手伝いができたことは非常に光栄でした。
仏縁に感謝です。
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