| 樋口様 |
「それにしても、あなたの仕事ぶりは頑固そのものですなあ」 |
| 鶴島 |
「そうでしたか?!」 |
| 樋口様 |
「注文しているのはこちらなのに、“そんなのはダメだ”と受け入れてくれない。安くしてくれと言ったら、“それなら他のところでやってもらえばいいでしょう”と平気で言う人ですから」 |
| 鶴島 |
「生意気言いまして…すみません」 |
| 樋口様 |
「いや。私はあなたの信念に打たれましたよ。“自分は掛け値で物を言ってるんじゃない。それだけのものをつくって、それだけ費用がかかるから言っている。特に蓮香寺については、安くしろと言われたから安くできるというようなものは、ひとつとしてつくっていない”。そうきっぱり言い切られた時には、すごい職人気質だと思いました」 |
| 鶴島 |
「あらためて伺うと冷や汗がでますが…(笑)でも、私自身も当初、ご住職の注文されることの、奥の深さが理解できていませんでした。
なにを注文される場合にも、檀家さんのことや先々のことを熟慮された上でおっしゃっているということが、自分も年をとるにつれて、だんだんわかってきたんです。
だから、私を育ててくださったのは蓮香寺様であり、ご住職だと思っています」 |
| 樋口様 |
「ところで、あなたもそうですが、仏師の林さんも職人ですなあ。」 |
| 鶴島 |
「ああ、そうですね。一見柔和に見えますが、彼も頑固ですね」 |
| 樋口様 |
「私がご本尊を彫ってくれる仏師を探していた時、あなたが林さんを紹介してくれたでしょう。私は正直言って、こんな若い人で大丈夫かなあと思ったんです。
そこで林さんに仏像に関するちょっとした質問をしてみた。
失礼な話ですが試したんですな。そうしたら、私の仕事場に行きましょうと誘われました。
行ってみたら狭い仕事場に仏像関係の本が山のようになっていた。
ああ、これは失礼なことを言った。
さすがに松久朋琳先生のお弟子さんだけのことはあると思い、それ以来、私のところの仏像は全部、お願いするようになりました。
いまではあちらこちらから引っ張りだこで、お忙しいと思うのですが、とてもいい仏様をつくっていただいて、感謝しています」 |
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