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日々雑録
京都には熱い思いを抱いた職人たちが大勢います。この日記を通して“ものづくりの心”を少しでもお伝えできればいいな、と思っています 専務取締役 鶴島 義允

ブツネタ433「地蔵三尊 三条河原来迎図」

2019年02月15日(金)



非常に思い出深いお仕事となった今回の仏画製作。

納入から数カ月経過しましたが、
遅ればせながら、「地蔵三尊 三条河原来迎図」製作のご報告です。






まず製作するまでの経緯を・・・。


遡ること424年前。
文禄4年(1595年)8月のこと。

子のなかった豊臣秀吉の後を継ぐはずだった秀次が、
その後に秀頼が産まれたため、秀吉は秀次を追放し自害させました。



そして、駒姫ら30余名の秀次の妻妾が打首とされ、
彼らの遺骸は三条河原に大きな穴が掘られ次々と投げ捨てられました。
幼い子達もその被害に。。

無念の最期をとげた罪なき一族。
世にも恐ろしい悲劇として後世に伝えられています。


その際、僧侶が背負子に乗せて持ってきた厨子に地蔵尊があり引導を与え、

これが瑞泉寺(京都市中京区木屋町三条下ル)に残る引導地蔵尊の由来となります。




瑞泉寺本堂の須弥壇の前は、いわゆる塚のあった場所で今もその下には遺骸が眠るとされています。




今回の施主は、田中吉政(戦国時代から江戸初期にかけての武将、大名。秀次の宿老。)

田中吉政公の精霊が、浮かばれない霊たちの冥福を祈るために、地蔵三尊の仏画を塚前に置くことを発願をされました。


あくまでも、今回の施主は田中吉政公。
吉政公の末裔の方と、オリジナルの仏画を創作することになりました。





まず、製作にあたり特記すべきなのは、
地蔵菩薩単体ではなく、地蔵三尊(掌悪童子、掌善童子)であるということ


過去に弊社が製作した『地蔵三尊来迎図』が今回の製作のベースとなりました。




地蔵三尊図は、資料を集めようにも、意外と出回っていないようで、

結局のところは不動三尊にたどり着きます。

⦿不動三尊
【中央:不動明王、向右:制多迦(セイタカ)童子、向左:矜羯羅(コンガラ)童子】

⦿地蔵三尊

【中央:地蔵菩薩、向右:掌悪(ショウアク)童子、向左:掌善(ショウゼン)童子】









『仏説延命地蔵経』にも、以下のように両童子のことは書かれています。






経典には、童子の位置、身色、持物が書かれています。


こういった資料を集めて、絵に反映させていきますが、
あくまで、取り入れる入れないは別です。


不動三尊のセイタカ童子(赤)・コンガラ童子(白)と同じ身色の表現ではありますが、

密教色が出てしまうので
掌悪童子は、やや色黒に。掌善童子は、色白に描くことにしました。


さらに


かわいいモデルにご協力いただき、童子のイメージを具体化していきました。







セイタカ・コンガラが小学校高学年くらいと考えるなら、

掌悪・掌善は5歳までくらいまでと仮定しました。


叩き台となった『地蔵三尊来迎図』から、変更点やご意向をヒアリングし、






まずは1回目の下絵が完成。





来迎図での雲の表現を大きく変更し、

両童子は磐の上に立ち、地蔵菩薩は蓮華から磐の上に一歩踏み出す姿勢に。


そして、

今回いちばん、頭を悩ませたのが、

絵の中に三条河原を表現したいとのご意向。


実際に河原を歩き橋を眺めました。









足を運び、施主の思いが余計に伝わり、

さすがに、河原は整備されていますので、検討した結果、

このような2回目の下絵が完成。





三条大橋の南側から、北東を眺める感じです。

橋の向うには比叡山。

河原には霞がかかっている感じに。



その後、数ヵ所の修正をし、これが3回目となる下絵です。




下絵が決定すれば、

この下絵を絹本に写し、これからが言わば本番になります。


仏絵師さんとは、色々なお仕事のご縁があり、

釈迦三尊図

雲上二十五菩薩来迎図

天人壁画

など、思い出深いお仕事ばかり。


下絵から、色が入れば格段に良くなることは一目瞭然。







本紙が仕上がれば、今度は表具師の手に渡ります。

裂地を厳選し、

外縁の正絹緞子、内縁の錆金の本金欄、一文字の本金竹屋町。






だんだんと完成に近づいてきます。

本紙が一番ではありますが、


表具(表装)することによって、その絵を引き立ててくれる。


逆に言えば、表具が悪いと絵は台無しになります。。。


こちらは表装途中の画像。



気になって、ちょこちょこ顔を出します。

たまに表具師に「また来たの!?」って顔もされますが、
そんなの関係ありません。

仕上がりが気になるのです。



そして完成です。







完成に至るまで1年余り。

掛かりっきりでないにせよ、製作に対する愛情は計り知れません。

そして無事に納まり、喜んで頂けたことで全て報われます。



『地蔵三尊 三条河原来迎図』

非常にやりがいのあるお仕事でした。

ご縁に感謝。