京都市西京区の京仏具匠、京仏商谷口。寺院・在家用の仏像、寺院荘厳仏具から仏壇まで製作・修復いたします。

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日々雑録
京都には熱い思いを抱いた職人たちが大勢います。この日記を通して“ものづくりの心”を少しでもお伝えできればいいな、と思っています 専務取締役 鶴島 義允

仏像修理の話30『後世の修理で様変り◆戞柄苅臆鵝

2015年10月18日(日)


前回からの続き・・


前回は考察まででしたので、修理の工程をご紹介していきます。






光背と蓮華は、新誂し取り替えるので、
それ以外の台座を水に浸け、下地を浮かせて除去し木地に戻し解体します。









水に浸ければ、簡単に漆や下地の層が剥がせて木地が出てくる・・・


なんてことはなく、これがまた結構時間が掛かります。


おばさんの厚化粧のように、下地を除去せずに上から塗っていけば、


どこぞの工務店さんのように仕事が早いのですが、そういう訳にはいきません。























このようにきれいに木地に戻しますが、


たまに、「どうやって剥がすのですか?金たわしとか使うのですか?」
というような質問をされたりしますが、


金たわしなんかで擦るなんてことは以ての外。


そもそも何故に木地に戻すのかというと、




「元の彫刻を生かす為」




下地や漆が何層にもなると、せっかくの彫刻がボテッと塗り膨れて
元の状態からかけ離れたものに仕上がってしまいます。




ですから、その彫刻自体を傷つけずに下地を除去する必要があります。




早く下地を除去するがために木地を痛めてしまうのは本末転倒。




ですから、コツコツと下地に水を浸み込ませ、それを除去していくのです。













さて、懸念していた虫喰いですが、






まず、こちらは高欄と地覆の彫り。
膠で接合された箇所に虫喰いを確認。












続いて、先程の高欄の支柱部分と下段地覆の海老束にも。












お次は、下段地覆の彫刻の裏板。


この部分は被害が大きいです。












最後に上段の地擦り框。


これより上の部分は虫喰いの被害はありませんでした。










これで、損傷状況の全貌が明確になりました。


虫喰いは想定の範囲内に収まりましたので、
ごく一般的な損傷状況だったと言えます。



そして、修理で楽しみなのが、墨書き(銘書き)。

なくて普通。あれば、ちょっとした幸せを感じます。




墨書きがあれば、いわゆる『当たり』です。




ただ、今回の修理は、墨書きが2度書かれていました。

なかなかレアなケースです。







こちらは、文化七午年(1810年)


九重座寄進 とあります。

江戸幕府は11代将軍家斉の時代に製作されたことがわかります。






さらにもう一つ。



明治廿二年(1889年)。


製作してから79年後です。


仏洗人と書かれてありますので、修理した方というのがわかります。


書き方に統一感無く、雑です。
お名前も2ヵ所書いてはりますね。

自ら「俺やで!」的なアピールの感じで書かれていたんでしょう。


おそらく、この時の修理で、今回取り替えることになった葺蓮華と光背が
作られたのだと推測します・・。


書き方はどうあれ、後の時代に伝えるのには良いように思いますが、


施主様側からご要望が無い限り、
社名等の記録書きは弊社では入れることはしません。


もちろん、ご要望があれば、謹んで残させて頂きますが、
自ら入れることは滅相もないです。




さて、当たり! の話は以上。
その後の工程、木地修理の工程に移ります。




工程の中でも最も要所になります。

虫喰いには、刻苧(こくそ・・・気の粉と接着剤を混ぜて充填)し、

欠損部や亡失箇所は補作し、

解体した部分は全て接合し直します。






葺蓮華と光背は新誂させて頂きました。








その次に塗師の手に渡ります。


膠と胡粉による下地の工程を経て、漆を塗り上げたのがこちら。





最下部の台輪には朱漆を塗り上げました。




蓮華のほうは、同様に膠と胡粉の白地を塗り、蕊には漆を塗り金箔を押しました。






白地の上から直接金箔を押しても、大きくは変わりませんが、


質感や光沢に違いが出ます。








さて、次にこの金具ですが、どうお感じになられます?






なんかショウビンやないですか?




ショウビン、、、 あ、失礼しました。




よく私共職人との間で良く使う言葉でして、京都弁のようです。

実用例で言えば、

「家庭菜園で作ったゴンボができたんやて?」


「へぇ でもあきまへん。ショウビンですわ・・。」

こんな感じです。



ショウビンとは小さいとか、貧相とか、そういった意味。


ゴンボはごぼうです。



ということで、こちらはこちらの思いで新しく新誂させて頂きました。




こちらが既存分。




こちらは新誂分です。




あ、写真がショウビンでしたね。













そして、蓮華と獅子を彩色を施し、組立てをして完成です。

















もちろん、極度の前傾姿勢も、








この通り、改善されています。




修理には時間を要します。


今回の修理では約5ヶ月。


じっくり手をかけさせて頂くので、その思いも日に日に強くなります。


ご縁に感謝です。