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日々雑録
京都には熱い思いを抱いた職人たちが大勢います。この日記を通して“ものづくりの心”を少しでもお伝えできればいいな、と思っています 専務取締役 鶴島 義允

仏像修理のハ・ナ・シ18 『台座・光背(立像1尺4寸用)復元修理』(全1回)

2011年11月09日(水)


台座・光背の復元修理をご拝命頂きました。



西山浄土宗寺院のご本尊・阿弥陀如来像の台座・光背です。

ご本尊のお身丈は1尺4寸。



台座・光背の内容は大変素晴らしく、作者の拘りがうかがえます。






今回はこの台座・光背の修復工程を2回にわけてご紹介します。



まず台座は、八角型。




彫刻のひとつひとつがかなり繊細に表現されています。


蓮華は、いわゆる踏み割り蓮華。

蓮弁(花弁)が付く蓮肉が、正面から見て中央部分が割れているのがわかります。


踏み割り蓮華は、1本の茎から2つの花をつける双頭蓮(そうとうれん)がモチーフ。




これがその双頭蓮。




イメージとしてはこちらの双頭蓮が近いかもしれません。



台座のこだわりもさることながら、

光背の彫刻も素晴らしく・・・




舟型光背、水煙透かし彫り。


そして、化仏が付いています。



小さな化仏ですが、輪光背もきっちり付いています。



この台座・光背をこれから修理するわけですが、

第1段階として、漆や下地を除去して木地の状態に戻します。



表面の構造として、簡単に言いますと、

木地 < 胡粉下地 < 漆 < 金箔

の層になっています。



修理においては、金箔・漆・胡粉下地の層を除去し、

木地の彫り上がりの状態に戻すわけです。


既存の状態から、新たな下地・漆を施すと彫刻が現状より塗り膨れ、

繊細な彫刻は“ぼってりした感じ”が生じます。

その塗り膨れが極力生じなくするために、下地を除去し、木地に戻します。



下地の除去は、ただただ丁寧に時間をかけて行います。

胡粉下地には膠が含まれ、木地の接合にも膠が使用されていますので、

水に浸ければ徐々に接着は緩んできます。



木地自体は傷めないように、漆や下地を除去。勿論手作業です。




下地除去に要した時間は約1ヶ月。

こちらは台座の洗浄解体後の写真です。








こちらは、光背です。






台座も光背も、いくつものパーツが接合されて形成されています。


解体が済めば、

損傷した部位を修理し、接合。

最も時間の掛かる木地修理の工程に移ります。



下地を除去し、解体をすれば、木地の損傷状態が露わになります。


ある程度はわかっていたことでしたが、損傷は著しく、


虫喰い被害(赤)、ネズミによる被害(青)をはじめ、

彫刻の欠損が数多く確認できました。












あと、損傷において特筆すべき点がひとつ。


それは“後世の修理による人為的被害”

被害というには少し語弊があるかもしれませんが、よくある事例です。


後世の修理とは、制作以後の修理のことですが、

きっちりと修理出来てないわけです。




今回確認できたのはこの踏み割りの葺蓮華。






1枚1枚葺いてある蓮弁(花弁)をご覧頂くとよくわかります。









蓮弁の雰囲気が違うのがわかります。

さらにその蓮弁には筋が描かれています。



この蓮弁は、明らかに別の台座のものが使用されています。

(厳密に言いますと、座像用の蓮弁です。)

いつしか、蓮弁の接着が緩み脱落し、その蓮弁自体が亡失。

後に、歯抜けになった蓮肉に、形状の違う蓮弁を取り付けられたのでしょう。



今回の修理では、

この蓮弁は使用せず、形状にあった蓮弁を新調しました。







あと、

このお台座には、

あらゆるところに墨書きが確認できました。



まずは、台座内部。





「寛文十一年 亥 七月七日」

とあります。 

江戸年間1671年、今から340年前。

江戸幕府・第4代将軍 徳川家綱の時代。



「大仏師 康雲」

ともあります。


仏師・康雲さんのお話は以前にブログでもお話しました。


ブツネタ182「またお会いしましたね♪康雲さん♪」



康雲さんの銘が書かれた阿弥陀如来像は数多く見てきましたが、

台座に書かれてあるのを見るのは初めて。




墨書きは実はこれだけではなく・・


下地を除去し、木地の状態に戻すと

下敷茄子・受座(したしきなす・うけざ)部分の上下に





この墨書きが確認できました。


この華盤には、この後下地を施し漆を塗り金箔を押しますので、

この墨書きは、もう確認することは出来ません。

ご寺院さまにとっては貴重な資料となることでしょう。





さて、木地の修理及び接合の工程には、約1ヶ月半を費やしました。





そうそう、先程の墨書きのあったのは、この部分です。







木地の色が違うのがわかります。

損傷著しかった部位は木地を取り付け、同様の彫りを施します。







光背の彫刻はかなりの繊細さ。 接合部が僅かで苦労しました。




蓮弁は全部で53枚。

下地・漆塗り・金箔押しがきれいに仕上がるように、

蓮弁1枚1枚にダボを付けて、最終金箔を押してから蓮肉に固定させます。



木地修理が完了すれば、塗師の手に渡ります。

まずは、下地の工程。







下地を塗っては研ぐ工程を繰り返し、

漆を塗り上げます。















そして箔押師さんに渡り、金箔を押します。


また、台座に取り付けてあった錺(かざり)金具は、


↑修理前

↓修理後


修理し、メッキ替えを施し、


金箔が押された台座に、この金具を取り付け、

蓮弁を蓮肉に取り付け、台座を組み立てて完成。
















上品な金箔の色艶。

非常にきれいに仕上がりました。


塗師さんも箔押師さんも、非常に繊細な彫刻で気を遣う仕事になりましたが、

難なく仕上げて下さりました。




最後に、

こちらは、この台座に立たれるご本尊・阿弥陀様。



ご本尊は手を入れませんでしたが、

左眉上部と右眉上部に虫喰いの穴が2つ確認できましたが、



補修しておきました。



西念寺様台座光背の復元修理記録は、以上になります。

ご拝命頂き有難うございました。